Human Brain Mapping

16th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping in Barcelona Spain, June 6-10, 2010

本年度のHBMは2010年6月6日から10日まで、スペインのバルセロナで開催された。バルセロナは地中海に面したカタローニャ地域の中心都市で、古くは14世紀ころに海上貿易で栄えたという。20世紀初期にはガウディの建築物で知られるような、都市文化芸術の開花を見ている。また最近では1992年にオリンピックを開催し、その都市基盤を拡張している。しかし2008年に不動産バブルがはじけて以来は、経済的にやや苦境に立っているらしい。
訪れると国際空港はかなり広く清潔で、市内の地下鉄網も日本国内の政令指定都市より整備されている印象である。しかし地上に上がると欧州独特の古い街並みや石畳が健在で、そのアンバランスが奇妙であった。繁華街は世界中からの旅行客であふれており、観光がこの都市の主要産業であることを示している。スペイン料理はやや塩辛かったが、白ワインが安くて旨かった。ビールはあまり飲まれないのか、どこへ行っても1種類しか置いていないようである。
さて学会であるが、今年は昨年度のような主要なテーマ(HBM2009がsignal decodingとsmall world analysis)が見当たらなかった。地元組織委員会のシンポジウムは、国内の有名どころを集めただけであまり統一感がなかった。会場はきれいで良かったが、中心部から少し離れており地下鉄を乗り継いで行く必要があった。詳細は以下の記述を参考のこと、また一部には抄録集からの引用を含んでいる。

DAY1

Talairach Lecture:
György Buzsáki, Rutgers University, Newark, NJ
Title: Oscillation-Assisted Internally Generated Cell Assembly Sequences Support Cognition
げっ歯類の海馬と前頭前野のニューロン活動を記録した研究では、環境からの入力が変化しなくとも発火の様式が変化することが分かった。同一の初期条件が類似した発火様式を示し、異なった条件では異なった発火様式を示す。これによってエラーを含む行動の選択を予言することができる。というような内容であったが、いまひとつ興味がわかない講演であった。

DAY2

Morning Workshop
Cut the Edge of NIRS/OT Technique Toward Synthesis for the Next Generation  Chair: Ippeita Dan, National Food Research Institute, Tsukuba, Japan
NIRSはヘモグロビンの濃度変化により局所の脳血流値をモニターするものである。NIRSは小さな実験系であり拘束性が少なく、体の動きに敏感である。これらの長所からNIRSは柔軟性の高い測定が可能であり、多くの臨床的または心理学的領域に応用され、神経画像のフロンティアを広げることに貢献している。近年ではNIRSの技術が急速に発展しているが、ここで一度立ち止まってその将来展望について考えてみる。感想としてはNIRSが臨床的に重要な装置であるのは明らかだが、fMRIを使えない被験者に対する脳機能計測という点で無理にSPM化する必要性があるのかどうか疑問に感じた。

Evolution of Optical Topography: Neuroimaging to Go Atsushi Maki, Hitachi, Ltd., Hatoyama, Saitama, Japan
近赤外線を用いた組織の代謝を測定する手法の発見とその歴史的開発過程などについて、さらに将来的な発展の可能性について述べた。例えば2人の間のコミュニケーションを計測するなどである。NIRSは日本が開発したというのが売りであったが、話を聞いていると原理や初期の技術開発は英国などで行われており、製品化したのが日本人であるということらしい。

Quantification of Cerebral Metabolic Rate of Oxygen without Hypercapnia using NIRS-SPM Jong Chul Ye, Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST), Daejon, Korea
独自に開発したNIRSデータをSPM様に解析する手法を提案していた。NIRSのデータの特徴として、fMRIと比較してプローブ間の距離が大きいことがあげられる。これをsparse optode modelを用いて解決していた。NIRSの最大の特徴は個人レベルでの臨床応用であるが、その目的にはわざわざSPMのようなグループ解析をする必要はあまりないのではないかと思った。

Probabilistic Spatial Registration of NIRS/OT Data with Crossmodal Perspective Ippeita Dan, National Food Research Institute, Tsukuba, Japan
NIRSとMNI標準脳への空間的標準化に関する発表で、脳波の国際10-20法に基づいたプローブの配置により可能になるということである。3Dディジタイザーの使用も可能性の1つとして挙げられていた。上と同様にわざわざ標準化する必要はないのではないか?

Enlightening the Brain? Placing Optical Imaging in Cognitive Neuroscience Matthias L. Schroeter, Max-Planck-Institute for Human Cognitive and Brain Sciences, Leipzig, Germany
NIRSのデータの周波数解析した結果について述べた。認知神経科学において加齢やADHDの研究に役立つことを示した。

Keynote lecture:
Wim Vanduffel, Harvard Medical Center, Charlestown, MA
Title: From Monkey to Human and From Human to Monkey: What Do We Learn?
サルの脳に局所の電気刺激やGABA注射を行った実験について述べた。視覚探索課題をしている時にLIPの不活化をすると、GABA投与下ではLIPの活動が低下し、他の領域では逆に活動が亢進した。この時に反応時間は延長し、さらに正答率は低下した。この結果は、遠隔領域に抑制の解除が起こったため活動が亢進したと解釈される。FEFの電気刺激をしながらfMRIを計測すると、刺激の種類に対する選択性が変化することが分かった。サルの脳とヒトの脳のMRI画像の重ね合わせをした。一か所の活動低下で他の部位に広範な活動亢進が認められた結果は、疾患脳でしばしばみられる結果に類似しており興味深い。しかしサルとヒトとで同じ課題を行ったとしても、その方略は必ずしも同じとは限らないのではないか。

Randy Buckner, Harvard University, Cambridge, MA
Title: The Brain’s Default Network
DMNの発見から命名など、講演者がかかわってきた研究の歴史的過程を述べた。最終的には正常の加齢や、アルツハイマー型認知症とPIBの結果についてまとめた。演者はいくつもの総説を書いており、内容的には特段の新しい結果は呈示されていなかった。

Pascal Fries, Ernst Strüngmann Institute, Frankfurt, Germany
Title: Electrophysiological Imaging of the Attention Network
サルに硬膜下電極を入れてガンマ帯域の活動を計測した。V1からV4に至るGranser causalityの結果は順行性の関係を示していた。PPCからV4に至る結果は逆行性であった。

Eleanor Maguire, University College London, London, UK
Title: Decoding Memories
エピソード記憶とナビゲーションの脳活動をデコーディングした研究を述べた。海馬領域を1.5mm角で撮像し、海馬後半が部屋の中の位置情報を有していることを示した。エピソード記憶に関しては、3選択の課題でデコーディングの正解率は45%であった。解析手法についてはまったく述べず、結果だけをきれいに呈示しているのでどうかなという印象がある。正解率もあまり高いとは言えない。

Andreas Meyer-Lindenberg, Central Institute of Mental Health, Mannheim, Germany
Title: Psychiatric Neuroimaging: From Maps to Mechanisms
統合失調症の遺伝子解析と神経画像では、ワーキングメモリーとCOMT、BDNFの結果などが報告されている。オキシトシンなどと向社会機能についての実験結果も示された。多くの有名雑誌に研究成果を発表している講演者である。一つ一つの実験結果はそれなりに妥当な結果を示すものの、それらを統合してあらたなモデルを示すまでには至っていない。研究内容が次々と新しい遺伝子多型に移るのだが、それでは前の結果はどうだったのか。精神疾患の病因にせまるという点ではやや表層的な内容に終始していた。

Adrian Owen, MRC Cognition and Brain Sciences Unit, Cambridge, UK
Title: Using fMRI to detect conscious awareness
ヒトで麻酔下に聴覚刺激を与えても聴覚領域の賦活は認められる。同様に植物状態の患者やMCSに患者にも同様の賦活が認められる。24名の閉じ込め症候群の患者に、テニスをしている所を思い浮かべるように指示した。すると捕捉運動野が賦活する。それを手がかりとして、自らは意思表示できない患者の意思を知る手段として利用できる。将来的にはfMRIではなくEEGを用いて同様の実験を行うことも可能である。最近はやりのBMIに近い感じの研究であるが、fMRIの臨床応用で最も可能性が高いのがこの手法であろう。

Symposia:
Decoding Information Conveyed by Cortical Columns: Mechanisms and Advanced Methods for Investigating Higher-Order Cognitive Functions
Chair: Amir Shmuel, MNI, McGill University, Montreal, QC, Canada; CMRR, University of Minnesota, USA
多変量機械学習アルゴリズムは、ヒトの脳のfMRIデータをデコードする能力を持っている。それは精神状態、知覚された感覚情報、単語などすべての脳領域に運ばれた情報をデコードすることに成功している。幾つかの実験では皮質コラムの情報、例えば視覚優位性や方向など、をデコードすることも可能である。このシンポジウムではミリメータ以下の解像度における皮質コラムの情報をデコードする方法について述べられた。さらに基礎的な知覚処理だけでなく、高次認知機能の研究についても述べる。デコーディング技術の応用は、昨年度頃から多くなってきている。現時点では視覚と聴覚であるが、近い将来にはすべての感覚領域で可能になるだろう。しかしまだ正解率は高くても70%程度であり、現実場面に応用するにはまだ信頼性に欠けると言わざるを得ない。これがどの程度100%に近付くかが今後の焦点になるだろう。

Visual Image Reconstruction from Human Brain Activity: A Modular Decoding Approach Yukiasu Kamitani, Keihanna Science City, Japan
視覚認知の領域におけるdecodingの結果を示した。有名なNeuronの実験などについての講演。

Decoding Voice, Speech and Sounds from Distributed Patterns of Activity in Lower Auditory Areas: The Role of Advanced Feature Selection in fMRI Data Analysis Federico Demartino, Maastricht University, Maastricht, The Netherlands
聴覚認知に関するdeodingの研究について示した。3種類の母音を3人の話者が発音した音声を提示し、decodingの結果では70%(チャンスレベルは33%)の正答率であった。

Mechanisms of fMRI-Based Decoding of Information Conveyed by Cortical Columns Amir Shmuel, MNI, McGill University, Montreal, QC, Canada; CMRR, University of Minnesota, USA
皮質コラムの活動をdecodingしたという内容だが、いまひとつ理解ができなかった。

Decoding the Contents of Visual Feature Perception, Attention, and Working Memory Frank Tong, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA
7T装置で1mm角のvoxelで計測したデータでdecodingを行った。V1からV4の活動にも、ワーキングメモリーの成分があることが分かった。

The Dopamine Midbrain
Chair: David H. Zald, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA
ドーパミン系は動機づけ、運動、学習などに関係しており、さらにパーキンソン病や薬物依存、統合失調症などにわたる精神神経疾患にも関係している。黒質や腹側被蓋野などの中脳ドーパミン系は、前脳のほとんどの領域にドーパミンを供給することで、ドーパミン神経伝達の中心と考えられている。中脳の働きを理解することは、ドーパミン機能を解明する上で重要である。しかし神経画像研究がこの分野を研究し始めたのはごく最近である。ヒト以外の霊長類における神経解剖・神経生理学的研究は、ドーパミン神経の構造や連絡や発火の性質などを詳細に報告している。本シンポジウムでは神経解剖学、生理学、認知神経科学における中脳ドーパミンの働きをヒトとそれ以外の霊長類で検討した。さらに最近の方法論的な進歩や、ヒトと動物実験のトランスレーションについても述べられた。いまさらドーパミンというのも、いささか古めかしい感じがする。内容的にはSFNのシンポジウムのようだった。

Integrative Neuroanatomy of Dopamine Midbrain Projections to the Striatum Suzanne Haber, University of Rochester, New York, NY, USA
解剖学的に線状体と前頭葉をめぐる神経回路について、それが運動や認知などの領域別に分離していることを示した。

Temporal Discounting Suggests Subjective Rather than Objective Reward Value Coding in Primate Dopamine Neurons and Human Ventral Striatum Wolfram Schultz, Cambridge University, Cambridge, UK
Prediction errorで有名な研究者であるが、今回はサルの神経活動の時間割引について述べた。この反応は双曲線を示していることを示した。またヒトのfMRIで時間割引の多い被験者と少ない被験者での比較などを示した。

On the Relationship Between Hemodynamic Responses of the Substantia Nigra/Ventral Tegmental Area (SN/VTA) and Dopamine Release Emrah Duzel, University College London, London, UK
7T装置でfMRIを行い、さらにPETでドーパミン受容体を計測した。構造画像としては、0.35mm角で撮り鉄の分布を調べた。

Personality and Behavioral Correlates of Dopamine Midbrain Functioning David H. Zald, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA
新奇性追求の性格傾向とD2/3受容体PETの関係を黒質で調べた。衝動性とD2受容体にも関連があった。

Top-Down Modulation in Visual Processing
Chair: Adam Gazzaley, University of California-San Francisco, San Francisco, CA, USA
脳は外界を単に受動的な刺激駆動型の方法で表象している訳ではない。高次皮質領域から下位皮質または皮質下の神経活動への促進または抑制機能を含むトップダウン機能が重要である。これは情報がどのように表象され、また貯蔵されているかに影響を与えている。このシンポジウムでは、視覚処理におけるトップダウン処理に関するデータを示す。トップダウン処理が低下することは、正常の加齢やアルツハイマー病、PTSD、ADHD、自閉症などにおける認知機能低下の原因となる。これらのメカニズムに対する治療的介入(薬理学的または認知トレーニングなど)は、広い意味で重要な応用性がある。トップダウン処理は脳内での情報処理の流れの理解や、すべての高次認知機能の基盤を解明することに役立つ。視覚的注意の研究は山ほどあり、認知処理の基本的領域なのでそれぞれがきちんとした実験を行っている。しかすその割にはいつまでも同じような結果を示すばかりで、とりたてて内容に進歩があるとは感じられない。

Attentional Selection from Natural Scenes Sabine Kastner, Princeton University, Princeton, NJ, USA
fMRIによる実験結果を示した

Neural Synchrony and Selective Attention Robert Desimone, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA, USA
サルの電気生理学的実験の結果を示した。

Top-Down Predictions in Visual Cognition Moshe Bar, Harvard Medical School, Charlestown, MA USA
fMRIとMEGの結果を示した。

Top-Down Enhancement and Suppression in Visual Association Cortex Adam Gazzaley, University of California-San Francisco, San Francisco, CA, USA
fMRIとERP、TMSを用いた実験結果を示した。

DAY3 :Connectivity in the Developing Brain Chair: James R. Booth, Northwestern University, Evanston, IL, USA

このシンポジウムは定型的および非定型的な脳成熟について検討された。遠い領域間結合の増加と短い領域間結合の減少が脳の発達を形成している。皮質と皮質下の分離や、課題で賦活するネットワークとデフォルトネットワークの分離が進んでいることもある。発達によりトップダウンの調節を受けることもある。このような原理が安静状態のデータや、認知課題(計算、認知、読み、言語)のデータで解析された。様々な解析手法、例えばグラフ法、スモールワールド解析、効果的結合性、拡散テンソル画像などが用いられた。これらの理解は、自閉症やトレット障害、ADHD、読字障害など非定型発達の理解にも貢献する。児童のfMRIでは課題を用いるより安静状態の脳活動を計測して、それの結合性を見るほうが簡単であろう。課題成績の良し悪しに関係しない活動が得られるからである。この手法は精神疾患などでも頻用されるようになっている。

Development of Large-Scale Functional Brain Networks in Children Vinod Menon, Stanford University, Palo Alto, CA, USA
8歳と20歳で安静時fMRIを行った結果、皮質下と皮質領域の結合性が群間で異なることが分かった。

Maturing Functional Brain Networks in Typical and Atypical Development Damien Fair, Oregon Health and Science University,Portland, OR, USA
安静時fMRIとsmall world networkの解析を行い、近い領域間結合と遠い領域間結合に差があることが分かった。また視床と皮質の結合も異なっていた。

Pathways to Language: Brain Structural Prerequisites for Language Functions Angela D. Friederici and Jens Brauer, Max Planck Institute for Human Cognitive and Brain Sciences, Leipzig, Germany
言語課題のfMRIとDTIを7歳と20歳で行った結果、子供ではBA45野の活動が亢進しており、その線維連絡も異なっていた。

Effects of Age and Skill on Effective Connectivity Within and Between Hemispheres During Language Processing in Children Tali Bitan and James R. Booth, Haifa University, Haifa, Israel
DCMを用いた研究では、子供では下前頭回から側頭葉への結合性が低下していた。

DAY4 :◎Gene Function Meets Brain Function Chair: Mallar Chakravarty, Rotman Research Institute, Baycrest Hospital and the Mouse Imaging Center, Hospital for Sick Children, Toronto, Ontario, Canada

Imaging genomics は急速に発展しており、健常者と中枢神経系の複雑な疾患における脳の形態と機能の遺伝的な裏づけを理解することに役立っている。脳画像によって明らかになった表現型が、診断や予後に関して問診や質問紙などよりも鋭敏であることが示されている。これらの表現型のSNP解析は、特定の疾患の病的発達に関係する候補遺伝子を同定することができる。大規模な領域を限定した遺伝子発現解析は、脳画像研究にも応用できる。さらにシステム神経科学レベルでの機能的ネットワークの理解にも貢献する。このシンポジウムでは遺伝子、遺伝子発現、顕微鏡的レベルからヒトの脳画像までを橋渡しする。演者は統合失調症の大規模脳画像遺伝子研究 (Dr. Peter Kirsch, Germany)、アルツハイマー病研究 (Dr. Michael Greicius, USA)、遺伝子発現の3Dマップの開発 (Dr. Ed Lein, USA)、脳形態と機能の遺伝要因研究 (Dr. Tomas Paus, Canada)の専門家である。Dr. KirschとDr. Greiciusは脳画像遺伝子研究がどのように先端的トランスレーション研究として応用されるか、また神経画像の中で候補遺伝子解析を行う手法について述べた。Dr. LeinはAllen Institute Human Brain Atlasと、それがどのような形でゲノムワイドな遺伝子発現パターンと結び付けられるかを話した。最後にDr. Pausは脳画像遺伝子研究が脳の発達と機能解析表現型として有用であることを示した。 結局のところ統合失調症に関してはGWASの結果が不明瞭なこともあり、何とも言えない状態である。その一方でアルツハイマー病に関しては、比較的頑健な結果が集積していると言えよう。大規模なコホート研究などは日本ではほとんど不可能なものである。

In-vivo imaging genetics: a scaffold for translational science Peter Kirsch, Central Institute of Mental Health, Mannheim, Germany
統合失調症のGWASの結果などを踏まえて、COMTなどが候補遺伝子としての可能性が低くなっていることを挙げた。ZNF804Aの結果を示したが、これも将来的に生き残るかどうかわからない。

ApoE and brain imaging: A cautionary tale and a guide to future studies Michael D. Greicius, Stanford University, Stanford, California, USA

それに比べるとアルツハイマー病に関しては、APoE多型の結果は信頼性が高いといえるだろう。E4キャリア高齢者で脳ブドウ糖代謝や脳賦活が低下を示し、逆にE4キャリア若年者では賦活が亢進している結果は妥当である。PIBに関してもE4ではE3よりもアミロイド沈着が多い。さらにTOMM40遺伝子の結果や、後部帯状回の第3層においてミトコンドリア関連遺伝子の発現が亢進していた。

The Allen Human Brain Atlas: Mapping Genes in Action Ed Lein, Allen Institute for Brain Science, Seattle, Washington, USA
死後脳のMRIをとり、組織の遺伝子発現を調べてのちにMRIと合わせる研究でデータベース化している。

Populations Neuroscience: A New Merging of Disciplines Tomas Paus, Rotman Research Institute, Baycrest Hospital, Toronto, Ontario, Canada
カナダのケベック州におけるコホート研究について述べた。構造MRIと遺伝子を600人規模で集めている。結果についてはあまり示されなかった。

DAY5 : fMRI in Clinical Trials: Promise, Progress and Path Forward Chair: Adam Schwarz, Eli Lilly and Company, Indianapolis, Indiana USA

神経画像研究が成熟するにつれ、fMRIの神経精神疾患や薬物の脳における効果に関する臨床応用に関する興味が広がっている。後者においてfMRIはCNSのバイオマーカーや新たな治療法の効果を理解することに有用である。しかしfMRI研究をこのような目的で行うことは、 単独の施設では限界がある。複数の施設での実験やデータの比較、製薬会社の関与とその統制、薬物や疾患が脳血流に与える影響などを考慮する必要がある。このような方法を成功させるためには、さまざまな問題への理解が必要である。内容的にはあまり明確に臨床研究への方向性を打ち出せたようなものではなかった。

fMRI in Drug Development: Its Role and Demands Alexandre Coimbra, Merck and Co., West Point, Pennsylvania, USA
痛みに対する鎮痛剤の効果を、fMRIをバイオマーカーとして検証することが行われている。

Physiological Confounds in Clinical fMRI Trials: Issues and Mitigation Peter Jezzard, FMRIB Centre, Oxford, UK
加齢やカフェイン、CO2などでBOLD信号が変化すること示した。

Steps Towards Quantitative fMRI N Jon Shah, Research Center Juelich, Juelich, Germany
定量化の話であったが、あまり良く分からなかった。

A Cookbook for Multi-Site fMRI Studies Douglas N Greve, Athinoula A Martinos Center for Biomedical Imaging, Charlestown, Massachussetts, USA
fBIRNによる多施設fMRI実験の紹介で、実験はすべて3Tで行われていた。施設間差は特にB0 distortionで有意であった。施設間差をモデルに入れた解析をすること、施設を巡回する被験者を用いること、一人の代表研究者が解析法を統括することなどが重要であった。また患者情報の秘匿にも注意すべきであった。

LOC symposium
The Legacy of Ramon y Cajal: From Brain Structure toCognitive Function – The Spanish School Version
スペインを代表する認知・神経科学領域の研究者の発表であったが、あまり統一された内容ではなく単に業績の高い人を集めたという感じのシンポジウムであった。

The Cajal Blue Brain Project: Three-dimensional Electron Microscope Imaging of the Cerebral Cortex Javier de Felipe, Instituto Cajal, Madrid, Spain
スペインの代表的な神経科学者であるカハールはゴルジと論争したが、最終的にカハールが勝ったことは有名である。最近の3D映像を用いた研究では脳組織の画像を立体的に表示することができる。

Role of Brain Oscillations in Mediating Encoding and Retrieval Processes
Mercedes Atienza, University Pablo de Olavide, Seville, Spain
記憶における脳活動のoscillationについての研究。ERPで4-7Hzのθ帯域の活動を見た。顔と名前の一致不一致や位置の関連性を判断させると、θ帯域と正答率に相関を認めた。その発生源は海馬傍回と頭頂葉であった。加齢がθ波の活動に影響を与えていた。

Role of MEG in the Early Diagnosis of Alzheimers Disease Fernando Maestu, Complutense University of Madrid, Madrid, Spain
アルツハイマー病のMEG研究を示した。さらにMCIや主観的記憶障害に関する実験結果も示された。

Tracking the Cognitive Processes Involved Speech Production
Albert Costa, Universitat Pompeu Fabra, Barcelona, Spain
単語の意味処理の時間過程をERPなどで示した。バイリンガルではACCの活動が少なかった。GM体積の違いも認められた。

GneticsのOral session

双生児の多数例でDMNの活動を計測し、MZとDZで比較したところACCに違いを認めた。400例以上の双生児でBDNF多型を調べた結果では、脳梁後部に違いを認めた。ADNIプロジェクトのデータにvoxel-wise GWASを行った結果を示した。NOS1遺伝子とDA受容体の結果では、扁桃体と中脳に差がみられた。MRIで計測するGM体積などの脳構造は特に遺伝率が高いが、これは結局のところMZはDZよりも容姿が似ているということと同じである。それがどのような意味を持つのか考察する必要がある。

15th Annual Meeting Organization for Human Brain Mapping June 18 to 22, 2009 in San Francisco, CA, USA

今年は豚インフルエンザの最初の流行が5月頃から本格化し、一体全体海外出張は可能なのかどうか誰も直前まで分からなかった。結局のところこの手の流行性疾患は、誰がどうあがいても世界的流行は避けられないということが分かってきた。私の大学でも出発の2週間くらい前には、渡航制限はなくなっていた。ある国立研究所では、最初からなんの制限や警告もなかったという話も聞いた。サンフランシスコの会場ではもちろん誰もマスクなどしていないし、咳エチケットなどという上品なものは存在しなかった。すぐ隣の席でひどい咳をする出席者も多く、おまけにいつものように冷房の利かせ過ぎでいつ感染するかと気をもんでいた。幸い発熱もなく帰国し、その後も体調に問題はない。講演が終わるとトイレでうがいなどして予防していたが、海外ではこれもまったく奇異な行為である。今回ポスター発表の総数は2226であり、インフルエンザで出席を取りやめたというのは限られた数のようであった。それより問題はスポンサーの減少であったようだ。昨年来の経済危機で、思うような金額が集まらず大会委員会はさぞ苦労したことだろう。この傾向は今後も続くと思われ、今年以降の開催される国際学会には影響が大きいだろう。今年も発表内容について報告するが、ここには抄録からの引用も含まれていることを記しておく。来年は2010年6月6日から10日まで、スペインのバルセロナで開催される。

HBM2009-DAY1

Talairach Lecture
Morality and the Social Brain
Patricia Churchland, Department of Philosophy, University of California, San Diego
モラルと社会脳に関する哲学的な考察を述べた。モラルには愛着と信頼が必須であるが、それらの行動を支えるのはオキシトシンとバッソプレッシンなどのホルモンである。自己からさらに自己の所有という概念に発展し、さらに自己と家族、自己と家族の所有という概念が形成されていく。これらは主に前頭前野の働きによるものである。哲学者の発表であるが、やや無理に脳内モデルを用いている印象はぬぐえない。

HBM2009-DAY2

Morning symposium
Imaging Genomic Methods: Moving Beyond Single Candidate Genes
Chair: David Glahn, Olin Neuropsychiatry Research Center, Institute of Living and Department of Psychiatry, Yale University, Hartford, Connecticut, USA

中間表現型としての神経画像は脳の形態や機能の定量的な指標であり、自閉症や認知症、統合失調症などの複雑な脳疾患の遺伝的決定を同定することに役立つ。このような指標は新たな遺伝子の発見や、システム神経科学のレベルで特定の遺伝子の機能を理解へと発展する。さらに脳画像は従来からある他の臨床診断手法よりも、疾患に対し感受性が高いことが分かってきている。しかし今までの研究は、特定のSNPを対象として少数の被験者を用いたものであった。このような手法はあるSNPが表現型にどう貢献するかを調べるには有効だが、新たな遺伝子の発見には結びつかない。大規模な遺伝イメージング研究の解析手法に関しては現在開発中である。このシンポでは、画像と遺伝子の統計解析手法について述べられた。各シンポジストの発表内容は下記のようだが、まだ決定的な手法は開発されていないような印象であった。

Discovering Gene for Brain Function and Structure
David Glahn, Olin Neuropsychiatry Research Center, Institute of Living and Department of Psychiatry, Yale University, Hartford, Connecticut, USA
遺伝子イメージング研究の原理を述べ、連鎖研究とGWASについて話した。デフォルトモードと遺伝子の関係を調べた。333人に被験者でfMRIを行い、ICAでデフォルトモードを解析した。デフォルトモードの分布には強い遺伝性が認められた。

Improving Sensitivity with Multiple SNPs While Controlling False Positive Risk
Thomas Nichols, GlaxoSmithKline Clinical Imaging Centre, Imperial College London, London, United Kingdom
抗うつ薬の開発についてのVBMを用いた研究を発表し、多重比較の問題について述べた。

A Parallel ICA Multivariate Approach for the Identification of Associations Between Large Genetic Arrays and Imaging Endophenotypes
Vince D. Calhoun, Image Analysis and MR Research, The Mind Research Network, Deptartment of ECE, University of New Mexico, Albuquerque, New Mexico, USA
数百万にもおよぶSNPと脳画像データの多変量解析について述べた。fMRIデータとSNPデータをICAを用いて解析していた。またERPとSNPの関係についても示した。

Integrative Approaches to the Identification of Genes Involved in Brain Structure and Function
John Blangero, Department of Genetics, Southwest Foundation for Biomedical Research, San Antonio, Texas, USA
扁桃体の体積には強い遺伝性があった。サンプル数の問題と、リンパ球を利用した遺伝子発見について述べた。

LOC Symposium
The Cognitive Neuroscience of Decision Making
The neural basis of value signals for decision making
A. Rangel
内側OFCと報酬課題の関係を発表した。報酬の価値は内側OFCとPCCが、報酬価値とsaliencyは側座核が関係していた。

Social and economic prediction error signals in the medial prefrontal cortex.
T. Behrens
ACC損傷のサルと報酬課題の関係を示した。ヒトのfMRIでも報酬とACCの関係が分かった。報酬と社会的情報はそれぞれ背側と腹側のACCに関連していた。

Reward expectation and social interactions in economic behavior.
E. Phelps
線条体と動機付け、行動の関係について話した。信頼ゲームで良いパートナー、普通のパートナー、悪いパートナーを設定した。報酬を分配するか独占するかで線条体の活動が異なり、また前頭前野との連結性も変わっていた。オークション課題も行い、賭けすぎの場合の脳活動を計測した。負けると線条体の活動も低下した。

Prefrontal antecedents to decision making.
J. Fuster
前頭前野の大御所の発表で、主に知覚―行動サイクルモデルの提唱であった。実行記憶は前頭前野に、知覚記憶は後頭葉などにありそれぞれが連結しているという概念である。

Keynote Lecture
Does White Matter Matter?
Heidi Johansen-Berg, FMRIB Centre, University of Oxford, John Radcliffe Hospital, Headington, Oxford, UK
演者はDTIの解析手法を開発しているグループの1人である。局所のFA値はTMSで調べた連結性に相関を認めた。脳梁のFA値と両手の協調運動にも相関があり、FA値は行動指標を強い関連性があることが分かった。脳梗塞の患者が回復する過程で、TractやFA値が変化していた。ピアノの練習を行うと上従束のFA値が変化した。ジャグリングの練習では頭頂葉のGM体積が上昇するが、同時にFA値も上昇していた。DTIで計測されるFA値が、ヒトの行動や心理活動と密接に関連していることを示した。

Symposium
Information Representation in Prefrontal Cortex: What, Where, and Why
Susan Courtney, Johns Hopkins University, Deptartment of Psychological and Brain Sciences, Baltimore, Maryland, USA
前頭前野の機能的構成や、その高次脳機能における役割については長く議論されている。元来もっとも大きな問題は空間的-非空間的情報が前頭前野の異なった領域で処理されているかどうか、またはこれらが同じ領域で異なった処理で行われているかどうかであった。この問題は最近では前頭前野の各領域における、多くの異なった機能的性質に関する議論へ発展している。このシンポジウムでは、前頭前野における情報と領域に特異的な機能的乖離、および処理方法に特異的な機能的乖離について述べている。しかし各発表の内容は従来の前頭葉研究から大きく発展しているようには感じなかった。

Face Processing and Prefrontal Cortex
Winrich Freiwald, University of Bremen, Brain Research Insitute, Bremen, Germany
マカクサルの顔領域は側頭葉にあり、中央部分は顔検知に前方部分は顔の同定に関係している。中央部分を電気的に刺激すると、他の部分の活動も亢進することから機能的連結があると考えられる。同様の顔領域は前頭葉にも存在している。これは3つあり、orbitalとventrolateralとarcurateである。

The Dynamic Interplay Between Cognitive Control and Memory
Anthony Wagner, Stanford University, Department of Psychology, Stanford, California, USA
エピソード記憶と前頭葉の賦活について、単語は左半球で風景は右半球であった。刺激の反復呈示ではVLPFCが賦活した。

The Role of Prefrontal Cortex in Selecting Percepts or Memories
Anna Christina Nobre, University of Oxford, Deptartment of Experimental Psychology, Oxford, England
空間的課題でpre cueとretro cueを呈示すると成績が上がる。この時retro cueに関連するのがDLPFCとIPSであった。

Information Representation in Working Memory
Susan Courtney, Johns Hopkins University, Deptartment of Psychological and Brain Sciences, Baltimore, Maryland, USA
後頭葉から前頭葉への線維連絡のFA値が課題成績と相関した。

Keynote Lecture
Conscious and Subliminal Components of Number Processing
Stanislas Dehaene, INSERM-CEA Cognitive Neuroimaging Unit, Gif/Yvette, France
数字の脳内処理に関しては第1人者である演者の、様々な研究内容を示した圧倒的な講演であった。サイエンス級の論文が何本あったか分からないくらいである。ちょうどこの発表と同じ日にサイエンスにもう1本論文が掲載されたという! IPSの中でも水平部分は他の様々な認知・運動機能とは関係なく、計算課題で特異的に活動が亢進する。脳内の数的処理は自然数ではなく、対数で表現されているらしい。3ヶ月の幼児でも、数の処理を行わせるとERPで頭頂葉に電源が計測される。Symbolicな数は各数に特化した反応を示すが、non-symbolicな数は前後の数にも反応を示す。またアマゾンの部族で数学的認知を行わない被験者でも実験を行った結果同じような反応が出たという。

Oral session
O-F3 Psychiatric Disorders Chair: Karen Berman, National Institutes of Health, NIMH, Bethesda, MD, USA
188: Classification Methods for Identifying the Neural Characteristics of Antidepressant Treatment
Shuo Chen, Emory University, Atlanta, GA, USA
40人と大うつ病患者にfMRIとresting stateの課題を行った。治療A(抗うつ薬)と治療B(CBT)で脳活動を比較した。14個のROIを設定し、その相関マトリクスを作成した。Support Vector Machineを用いて治療Aと治療Bを弁別することが可能であった。

89: Cingulate and Insula Activity Predict Relapse in Recovering Stimulant Addicts
Vincent Clark, Mind Research Network, Albuquerque, NM, USA
薬物依存の再発をfMRIとOddball課題で予言することができるかどうか調べた。72人の患者の中で45人が薬物(コカインか覚せい剤)を再摂取した。PCCと島の活動が再発を予言していた。

187: Diffusion Tensor Imaging (DTI) Demonstrates that Prefrontal-Amygdala White-Matter Tracts Relate to Anxious Temperament and Amygdala Metabolism
Andrew Fox, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, USA
マカクサルのDTIで前頭葉と扁桃体の線維連絡を調べ、それと行動指標などとの相関を見た。扁桃体とOFCは鉱状束で結ばれている。この線維束の密度と行動抑制の程度とが相関した。また不安尺度とも関係があった。

435: An fMRI Functional Connectivity Study of Face Perception System in Social Phobic Patients and Healthy Controls
Sabrina Danti, Department of Human and Environmental Sciences, University of Pisa, Pisa, Italy
顔認知課題で認められた各領域間の結合度が、健常者と社会不安障害で異なるかどうかを調べた。患者で亢進していたのはFFAとSTSで、扁桃体では低下していた。

HBM2009-DAY3

Morning workshop
Structural Plasticity: Rewiring the Brain (of Mice, Monkeys and Men)
Chair: Heidi Johansen-Berg, FMRIB Centre, University of Oxford, John Radcliffe Hospital, Headington, Oxford, UK
機能的可塑性の概念は最近では広く受け入れられているが、ダイナミックな構造的変化における脳のキャパシティに関する研究はまだ少ない。最近の脳画像研究では学習により粗大な脳の構造変化が生じることが分かっている。これらの研究からはヒトにおける経験や、神経リハビリテーションなど臨床に関連した応用などへの興味が持たれる。しかしMRによる構造変化の生物学的説明はまだである。それは動物モデルによる実験が必要だからである。

Changing Brain Structures as a Function of Intense and Long-Term Practice
Gottfried Schlaug, Beth Israel Deaconess Medical Center, Boston, Massuchetts, USA
子供における時間をかけた音楽的な技能の獲得や、成人の音楽家における研究を発表した。音楽家ではピアニストは運動野と皮質錐体路が、歌手は聴覚野の神経線維がそれぞれ発達していた。子供では楽器の練習で運動前野が発達した。ブロカ失語では上従束が減っていた。言語療法の前後で脳賦活が亢進し弓状束が発達していた。

The Rapidly Changing Brain – Of Taxi Driving Mice and Maze Running Men
Jason Lerch, Hospital for Sick Children, Toronto, Ontario, Canada
ロンドンのタクシー運転手の海馬体積が増大している研究は有名であるが、これはバスの運転手には認められなかった。ヒトでコンピュータ上の迷路課題を行わせると、海馬のGMの増大と課題遂行時の空間的方略に相関を認めた。次いでマウスにモリス水迷路課題を行わせて、脳の組織を調べた。空間的手がかりを与えて学習させた場合に、海馬の体積が増大していた。これはニューロンやアストロサイトが増えているのではなく、シナプスの形成が多くなっていることによっていた。これはGAP43などで調べることができた。

Long-Distance Axonal Regrowth After Cortical Injury in Adult Rodents and Non-Human Primates
Randolph J. Nudo, University of Kansas Medical Center, Kansas City, USA
脳梗塞などで障害を受けた場合の神経線維の変化について述べた。

Training-Related White Matter Changes in the Human Brain
Heidi Johansen-Berg and Jan Scholz, FMRIB Centre, University of Oxford, John Radcliffe Hospital, Headington, Oxford, United Kingdom
白質の可塑性について述べた。ジャグリングの練習を6週間行い、4週間休む間にDTIを取った。練習により最初に白質のFA値が上昇しついでGMが上昇することが分かった。これらは頭頂葉において起こっていた。

Oral session
O-SA3 Modeling & Analysis: Computational Neuroanatomy
Chair: Bruce Fischl, MGH, Boston, MA, USA

381: Disco: DIffeomorphic Sulcal-Based COrtical Registration Guillaume Auzias, Cognitive Neuroscience & Brain Imaging Laboratory, CNRS UPR 640– LENA, Hôpital de la Salpêtrière, UPMC Univ. Paris6, Paris, France
DISCOという脳溝を合わせるソフトについての発表。

364: Segmenting the Subregions of the Human Hippocampus at 7 Tesla Marie Chupin, UPMC Paris6, UMR S975 CNRS, Paris, France
7TのMRIでの構造画像で海馬の領域を取り、そのセグメンテーションを行った。ボクセルサイズは0.25×0.25×3mmであった。

504: Automatic Model-Based Fetal Brain Parcellation to Quantify In Vivo Fetal Brain Development Nicolas Guizard, Pediatric Neurology Montreal Children Hospital, Montreal, QC, Canada
1.5Tで胎児のMRIを取った。麻酔は使っていない。ボクセルサイズは2×1×1mmである。

Keynote lecture
Working Memory and Neuroimaging
Alan Baddeley, University of York , Heslington, York, UK
心理学の大御所の発表で、特にイメージングに関する話題も多くはなかった。WMの新たなコンポーネントとして、Hedonic Detectorという感情とWMを結ぶ機能が付け加えられた。

Symposium
Predicting Future Behavior with Brain Data
Chair: Brian Knutson, Stanford University, Stanford, California, USA
脳画像における空間的・時間的解像度の改善は、経験したことの神経相関を見るだけではなく将来の行動を予測することにも使うことができる。このような研究には、新たなパラダイムや方法の開発が必要である。このシンポではこのような方法のいくつかが紹介され、将来の理論から臨床への応用における意味づけが発表された。

Keynote lecture
Analysis of Musical Pitch: Functional Pathways and Structural Correlates
Robert Zatorre, Montreal Neurological Institute, McGill University, Montreal, QC, Canada
音楽と脳画像で有名な研究者の発表である。音程の判断に関する、機能的(fMRI)構造的(VBM)研究を発表した。いずれの研究でも聴覚野の神経基盤が、音程判断に関係していることを示した。それ以外の領域としては、Intra-parietal sulcusが関係していたが、これは音の高低判断とメンタルローテーションとの類似によるものだろうと考えられた。

Oral session
O-SA5 Emotion Motivation: Reward Chair: Sam McClure, Department of Pyschology, Stanford University, Stanford, CA, USA

139: Parsing the Role of Dopamine in Human Reward and its Cognitive Consequences Using Genetic Imaging Esther Aarts, Donders Institute for Brain, Cognition and Behaviour, Nijmegen, Netherlands
報酬課題でfMRIを行い、ドーパミントランスポーター(DAT)多型と脳賦活の関係を調べた。DATの9R+ではドーパミン濃度が高く、尾状核の活動が大きかった。逆に9R-ではドーパミン濃度が低く、尾状核の活動も低かった。

148: The Rewarding Aspects of Music Listening Involve the Dopaminergic Striatal Reward Systems of the Brain: An Investigation with [C11]Raclopride PET and fMRI Valorie Salimpoor, Montreal Neurological Institute, McGill University, Montreal, QC, Canada
好きな音楽を聴いている時に、身震いがするような感動を覚えるがこの時に脳内でドーパミンが放出されているかどうかを受容体PETを用いて調べた。腹側および背側線条体でドーパミンが放出されていることが証明された。

166: Subgenual Cingulate Dopamine Release Predicts Reduced Positive Affect Following Amphetamine Michael Treadway, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA
アンフェタミンを投与してPETでD2/D3受容体の占拠率を調べた。膝下部ACCにおいて、D2/D3の放出と陽性感情に負の相関が認められた。

HBM2009-DAY4

Morning workshop
Integrating Face and Voice in Person Perception
Chair: Pascal Belin, Centre for Cognitive Neuroimaging & Department pof Psychology, University of Glasgow, Glasgow, United Kingdom
神経画像で重要になる2つのトピック、マルチモーダルの統合性と社会神経科学、の交差点としてこのシンポが位置づけられた。われわれの社会的交流は顔と声の結びつけが重要であり、言語的情報はその人物が誰であるかや感情状態などの非言語的も重要である。言語におけるマルチモーダルの統合の脳内基盤はよく研究されてきたが、顔と声の統合における非言語的側面はまだあまり研究されていない。予定されていた最初の2演題は中止になり、変わって顔認知研究の大御所であるAnna Puceが発表した。しかし中止になった演題のほうが、興味深い内容であった。PuceはFFAにおける顔認知と側頭葉における声の認知の関係をfMRIとERP(主にMMN課題)で計測した。ERPにおけるN170の振幅は聴覚+視覚の呈示によってかえって低下した。従ってERPに関しては聴覚と視覚の統合により、under-additivityが起こっていることが分かった。

Processing of Emotional Voices and Their Integration with Emotional Faces Within the Superior Temporal Sulcus
Thomas Ethofer, Laboratory of Neurology & Imaging of Cognition, Departments of Neurosciences and Clinical Neurology, University of Geneva, Geneva, Switzerland
聴覚視覚統合にSTSが重要であるが、STSの解剖学的な分類を行いそれぞれの機能を検討した。STSは幹部(前方の部分)と、前部上行枝、後部上行枝の3つに分けられる。幹部は主に声に反応し、前部上行枝は聴覚視覚統合に、後部上行枝は顔の表情変化に関連していた。

Cross-Modal Integration of Identity Information in Human Faces and Voices
Salvatore Campanella, Psychiatry Department, CHU Bruggman, Brissels, Belgium, Germany
FFAとSTSの聴覚視覚統合について述べられた。

Oral session
O-SU1 Cognition & Attention: Perception, Imagery, and Awareness
Chair: Alumit Ishai, Institute of Neuroradiology, University of Zurich, Zurich, Switzerland

4: ‘Taking up a dialogue’ with the Brain: Automated Letter Decoding from Single- Trial BOLD Responses in Real-Time Bettina Sorger, Faculty of Psychology and Neuroscience, Maastricht University, Maastricht, Netherlands
アルファベットの文字をわずかな学習によって、脳内の活動として計測した。その後データをdecodingすることで、各反応がどの文字に対応するかを判断することが可能であった。

34: Visible is Fast: Human Intracranial Recordings Reveal Early Sweep of Conscious Perception in Medial Temporal Gyrus Juan Vidal, INSERM U821, Lyon, France
マスキング課題を行い、知覚条件と非知覚条件を作成した。それらを比較すると、頭蓋内電極でとったERPのガンマ活動が異なっていた。

Keynote lecture
Machine Learning and Brain Imaging
Tom Mitchell, Machine Learning Department, School of Computer Science, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, PA, USA Sunday, June 21, 11:00-11:30
様々な単語を呈示した時の脳の反応をfMRIで計測する。次いで各単語における脳内の反応を、マシンラーニングにより学習させる。そうすると事前情報なしにClassifierが適切に判断して、脳内反応から単語を推測することが可能になる。単語には互いに関連性があるので、各単語に重み付けが可能になる。0.5の正答率がチャンスレベルとすると0.67で有意(5%未満)になるが、マシンラーニングでは0.79に達する結果が得られる。現在では、単語から絵を予測することも可能である。今後は単語から文節の判断などに発展させることを考えている。

Symposium
The Brain as a Small-World Network: From Micro- to Macro-Scale
Chair: Paul Laurienti, Wake Forest University School of Medicine, Deptartment of Radiology, Winston-Salem, North Carolina, USA
脳は現存する元も複雑な生物学的システムである。細胞間連結の自己構成的ネットワークとして、脳は情報を合成する途方もない能力を進化させてきた。脳の持って生まれた複雑性から、従来はネットワークを分解して個々の要素に分けて考えることが行われて来た。しかし複雑なシステムの各要素を足し算することは、必ずしも全体を類似させることにはならない。従って局所と全体の両方の性質を評価する方法が有効なかもしれない。1998年にWattsとStrogatzはいわゆるsmall-world networks(SWN)と呼ばれる、局所間の連結性を持ったネットワーク分類を提唱した。SWNは単純だが多才なグラフ理論に基礎を持ったマトリクスを含み、近傍のクラスタリングとネットワーク・ノード間の距離を計測する。SWNは複雑な社会的、技術的、生物学的ネットワークの研究に革命を起こした。例としては500の企業間の相互作用やインターネットの連結、細胞タンパクネットワークなどである。このシンポでは脳の解剖、機能、ダイナミクスなどの研究が呈示された。ネットワーク理論は、認知症やてんかんなどの疾患における研究にも使われる。脳画像におけるこの理論の応用は、空間的・時間的変化におけるネットワークの性質を解明することに役立つだろう。SWNの基礎的な内容は理解することができた。

Overview of Small-World Networks and Application in Neuroimaging
Satoru Hayasaka, Wake Forest University School of Medicine, Deptartment of Biostatistical Sciences, Winston-Salem, North Carolina, USA
SWNに関する基礎的な知識について示した。測定される指標は、clusteringとパスのlengthである。fMRIの機能的連結性との関係を明らかにした。

Small-World Networks – A Bridge from Structure to Function
Olaf Sporns, Indiana University, Department of Psychological and Brain Sciences, Bloomington, Indiana, USA
PCC(precuneus)が脳内のネットワークのハブになっていることを示した。構造画像における連結性がデフォルトモードネットワークに一致していた。この領域における損傷は、システム全体の機能障害を引き起こす可能性があった。

Fractal Scaling of Small-World Functional Networks
Ed Bullmore, University of Cambridge, Brain Mapping Unit, Department of Psychiatry, Cambridge, United Kingdom
フラクタル解析とSWNの関連性について示した。線虫の神経系はミクロなSWNで、マカクサルの脳はマクロなSWNである。連結性のコストが低いほど、機能としては高いことになる。神経系の進化とはすなわち効果性を最適にすることであった。

Synchronization and Small-World Networks
Wolf Singer, Max Planck Institute for Brain Research, Frankfurt am Main, Germany
Nature Review Neuroscienceの2009年2月号を参照するといいとのこと。

Keynote lecture
Time-Resolved Brain Imaging and the Neuroscience of Language
Riitta Salmelin, Helsinki University of Technology, Espoo, Finland
MEGを用いた言語研究の結果で、時間解像度に重点を置いた発表であった。同じ課題で行ったfMRIとの比較では、MEGでは単語認知でSTGが活動するがfMRIではIFGが活動することが分かった。

HBM2009-DAY5

Oral Presentaion
O-M6 Genetics
Chair: JB Poline, Neurospin, CEA, Gif-Sur-Yvette, France

189: Mapping Genetic Influences on Brain Fiber Architecture and Intellectual Performance – A High Angular Resolution Diffusion Imaging (HARDI) Study Ming-Chang Chiang, Laboratory of Neuro Imaging, Department of Neurology, UCLA School of Medicine, Los Angeles, CA, USA
DTIとHARDIという解析法で一般化FA値を計算した。白質で遺伝率の高い領域は脳梁と膨大部、視放線、放線冠であった。一般化FA値とIQの関係を見ると、脳梁、帯状回、小脳脚などで相関が高かった。

173: Genetics of DTI-Derived Parameters of Cerebral White Matter. A Track-Based Heritability and Linkage Study in Extended Pedigree Peter Kochunov, Research Imaging Center, University of Texas Health Science Center at San Antonio, San Antonio, TX, USA
DTIで計測された値の遺伝率を見ると、FA値で0.53と高く、L1では0.19であった。脳梁は遺伝率が高く、大きな線維束などFA値の高い領域は遺伝率も高かった。

186: The COMT Val158Met Polymorphism and Temporal Lobe Volumetry in Patients with Schizophrenia and Healthy Adults Stefan Ehrlich, Department of Psychiatry, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Charlestown, MA, USA
4箇所の施設における異なったスキャナーで、統合失調症の脳体積を比較した。SCHでは扁桃体と海馬の体積が低下していた。しかしMetアレルの保持者は扁桃体が大きかった。

204: New Method for Using Tagging Imaging Genetic Phenotypes to Validate Proline Cycle Genes Associated with Risk and Protection for Schizophrenia Lucas Kempf, Genes, Cognition and Psychosis Program, National Institute of Mental Health, NIH, Bethesda, MD, USA
Prolineサイクルはグルタミン酸の代謝に関わっているが、その遺伝的多型と統合失調症の関係を示した。

201: Building an Imaging Genomic Browsing System for Examining Genetic Effects on Brain Li Shen, Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN, USA
VBMのデータとSNPのデータ(3000個)を合わせたデータベースを作成した。それをWEBで見ることのできるシステムを構築した。ある特定の領域のROIで体積に有意差のあるSNPを抽出することができる。

Poster presentation

71: Switching schizophrenia patients from typical neuroleptics to aripiprazole increased dorsal anterior cingulate activity during working memory. F Schlagenhauf et al. Department of Psychiatry, Charité Universitaetsmedizin Berlin, Campus Mitte, Berlin, Germany
抗精神病薬のアリピプラゾールは部分的ドーパミンアゴニストであり、その効果は前頭葉のドーパミン濃度を上昇させる働きがあるとされている。統合失調症にfMRIとワーキングメモリー課題を行わせて、同剤の脳活動に与える影響を調べた。11名の患者に従来型の抗精神病薬投与時(T1)とアリピプラゾール投与時(T2)の2回にわたりスキャンを行った。健常対照者も同じく2回のスキャンを無投薬で行った。患者群は健常群よりT1で正答率が低く、T2ではそれがやや改善した。2-back対0-backでは前頭葉から頭頂葉の賦活が認められた。T1では患者群でACCに賦活の低下があったが、T2では患者群における賦活の増加により差が有意に減少した。アリピプラゾールに変薬して前頭葉の賦活が亢進したことを始めて示した。これは日本で開発された薬だぞと言ったが、相手は知らなかった。

81: Two day treatment of auditory hallucinations by high frequency rTMS guided by cerebral imaging: a 6 months follow-up study. S Dollfus et al. Centre Hospitalier Universitaire, Caen, France
幻聴は統合失調症における重要な症状であり、薬物に反応しないこともある。最近では、反復的TMSがこのような患者に有効であるという報告もある。今までは主に低周波数TMSを左側頭頭頂葉に行っていた。この研究では高周波数TMSをfMRIを指標として行い、6ヶ月の有効度を見た。11人の統合失調症患者に20HzのTMSを2日にわたり行い、6ヶ月の間症状をフォローした。TMSは、フランス語の文章を聞いている時のfMRIで賦活が見られた左STS後半部に行った。幻聴の強さと頻度は、試行前と施行後12日で有意に低下していた。11名中で7名(64%)は、幻聴スケールで約30%の改善を示した。2名では6ヵ月後に完全に幻聴が消失した。副作用はなかった。この研究は高周波数TMSの有効性を始めて示した。

152: Decoding of emotional information in voice-sensitive cortices. T Ethofer et al. Laboratory for Behavioral Neurology & Imaging of Cognition, Department of Neurosciences & Clinic of Neurology, Geneva, Switzerland
他者からの感情的なシグナルを的確に判断することは、社会的交流に重要な機能である。神経画像研究ではSTGに声に感受性を持つ領域があり、そこが感情的な声に反応することが報告されている。しかし多くの感情表現の間での反応の違いは大きくはないため、それらを区別することはできなかった。本研究ではfMRIとmultivariate pattern analysis (MVPA, SPIDER, Max-Planc Inst, Haynes, JD (2006), ‘Decoding mental states from brain activities in humans’, Nat Rev Neurosci, vol. 7, no. 7, pp. 523-534.)を用いて、異なった感情的な声を空間的パターン認識で弁別した。無意味な文章を、怒り、悲しみ、中性、喜びの感情で表現した声の刺激を聞かせてfMRIを行った。22名の被験者が事象関連型実験を行い、課題は声の性別判断を行った。その他に人の声、動物の声、環境音などを呈示して人の声に特異的な領域を調べた。各被験者において感情の弁別度が高いボクセルを選び、さらにボクセル数を25から1800まで変化させて感情のデコーディングを行った。両側のSTGにおいて、5種類の感情から1つをデコーディングすることができた(35から40%の正解率)。各感情はそれぞれ独特のパターンを示していた。この研究は初めてヒトの声から、fMRIを用いて感情を弁別したものである。その空間パターンは決して小さな領域ではなく、かなり広い領域に分布している。また視覚や嗅覚の領域にも拡大することが可能である。また顔認知などにも応用が可能である。

14th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping in Melborne, Australia, June 15 to 19, 2008

Day 1

Talairach Lecture: Michael Gazzaniga
今年度のTalairach LectureではNeuroimaging and the Lawと題した講演が行われた。内容は脳画像と意思決定や性格などの関係についてである。脳機能の基本的な要素として意思決定があり、また個性と脳賦活検査の個人差の関係について述べられた。また北米における裁判と被告の脳疾患について、幾人かの被告にはMRIなどで脳疾患が認められそれが犯行の原因の1つとして考えられたという。また幾つかの遺伝的差異が犯罪性と密接な関係性を持っているという報告を示した。このような場合に、脳疾患の有無や遺伝的傾向が判決に与える影響は無視できないものがあろう。今後日本において裁判員制度が開始されることを考えると、神経倫理的問題は考慮しなければいけないことになると思われる。

Day 2:

Morning Workshops: Pharmacodynamic fMRI: Promises and Pitfalls
最初は「Pharmacodynamic fMRI as a Biomarker in Treatment Development」Deanna M. Barch, Washington University, St. Louis, MO, USAで、薬理学的fMRIのOverviewを示した。従来からも、薬理学的化合物が認知や行動に与える影響は検討されてきた。例えば認知機能を改善する薬物において、その使用目的の妥当性を証明するなどである。これらは主に、行動実験を用いて行われていた。しかしイメージング技術の進歩により、fMRIを用いて直接的に薬物の脳機能や認知にあたえる影響を検証することが可能になってきている。そのような薬理学的fMRI(pfMRI)は、まず認知機能を改善する薬物の同定やその妥当性の検証の対して行われている。さらに薬物効果の個人差の検討や、精神神経疾患における認知機能障害の性質の解明などに応用することが可能である。pfMRIはこれらの領域における有用性を示しているが、この手法は実験計画や結果の解釈に幾つもの問題点がある。次いで「Non-Invasive Imaging in Translational Neuroscience: Modafinil Effects on Behavioral and Brain Activity in Healthy Subjects and Individuals with Schizophrenia」Cameron S. Carter, University of California at Davis, Sacramento, CA, USAでは比較的単純な注意課題を用いてpfMRIを行い、認知機能を改善するとされているModafinilが患者群と健常群でどのように行動指標や脳活動に影響を与えるかを示した。3人目の「Quantitative Pharmacodynamic Imaging by a Novel Method」Kevin Black, Washington University, St. Louis, MO, USAでは数学的モデルを用いて、pfMRIの結果のシュミレーションを行った。しかしながら内容的には数式が主体で筆者には理解が不十分であった。最後に「From Prediction Error to Psychosis: Ketamine as a Pharmacological Model of Delusions」Phil Corlett, University of Cambridge, Cambridge, Englandは、ケタミンを投与して幻覚・妄想に近い状態を惹起させ、最近流行のPrediction Error課題を行って妄想の脳内機構を検討した。前頭葉と基底核領域に関係が重要であることが示された。pfMRIの実験手法はまだ十分には確立したとは言えないが、幾つかの知見が積み重なってくれば認知や疾患モデルの構築に有用性があるといえる。しかし単純なfMRI実験でも、結果の解釈にはいろいろな可能性がある。さらに薬理学的効果が加わることで、解釈の可能性だけが広がってしまうことも考えられる。

LOC PRESIDENT’S SYMPOSIUM: Mechanisms of Attention: From Neurons to Systems
このシンポジウムは注意機構に焦点を当て、単一ニューロンからシステムレベルまでの研究を網羅した。「Neural Mechanisms of Visual Attention」Trichur Vidyasagar, University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australiaはサルの単一ニューロン実験から、視覚的注意が感覚ニューロン活動を選択的に亢進することでトップダウンのフィードバック機構を持っていることを示した。次いで「Awareness and Consciousness」Jason Mattingly, University of Queensland, Brisbane, Queensland, AustraliaはfMRI実験とTMSを用いた研究を呈示した。その結果では脳が感覚刺激をフィルターし、関連する感覚入力だけを選択することで意識的な知覚や行動に影響を与えているかを示した。さらに「Progressive Brain Changes in Early Psychosis」Chris Pantelis, University of Melbourne, Melbourne, Victoria, Australiaは統合失調症や初期精神病に関して、実行機能障害と構造画像の灰白質体積の低下の関連性を示した。最初の演者ではスライドが呈示されず、自分のMacを持ち込んで発表するなど技術的な不手際が目立った。このシンポジウムは、内容的に従来の研究の焼き直しが多いように感じた。注意の脳内機構は既に多くの研究発表が行われているが、今回の発表はそれらの延長線上にあり新奇な内容には思えなかった。最後の精神疾患に関する発表は、コホート研究で高リスク群や初発例のフォローアップが行われており興味深い内容であった。しかし残念ながら時間が短く、十分な内容を把握することができなかった。

KEYNOTE LECTURE:
Mel Goodale 「Duplex vision in the cerebral cortex: How and why the visual control of action differs from visual perception」では視覚の腹側経路(perception)と背側経路(action)の違いについて損傷脳やfMRI実験を用いて検証した。脳梗塞によって腹側経路(perception)だけが障害された患者においてfMRIを行い、健常群と比較した。その結果では健常群で認められる外側後頭葉の賦活が、患者においては認められなかった。また背側経路の活動が、一次視覚野の活動にフィードバックを与えていることが示された。視覚刺激に対して2つの経路が互いに相互作用を与えながら活動することが、物体認知とそれに対する行動を適切に行わせるのに重要であるとした。イメージングや神経心理学的知見を合せて、なぜ霊長類には背側と腹側の視覚経路が必要なのかを示した。

Symposium: Neuronal Correlates of Spontaneous Fluctuations in Hemodynamic Signals
安静状態における血行動態の自発的変動が神経活動の変動を反映したものであるということは、最近のニューロイメージングの重要なトピックである。最初に「Spontaneous Fluctuations in Brain Activity and Functional Connectivity in the Resting State Observed with fMRI」Michael D. Fox, Mallinckrodt Institute of Radiology, Washington University School of Medicine, St. Louis, MO, USAではこのfMRI信号の自発的変動に関するOverviewが述べられた。従来のイメージング研究では、安静時の脳活動の変動はノイズであるとして無視されていた。最近になって何の刺激も受けていない安静状態の脳における血行動態が、実は意味のある情報を含んでいることが発見された。これらの活動はfMRI以外にも脳波の誘発電位に影響を与え、さらに知覚や行動に影響を与えていた。安静時のfMRI信号の変動を通じて、皮質の機能的ネットワークが明らかになっている。従って安静時の信号変化は脳機能の重要な原則である。しかし一方で、この活動が無関係な生理学的変動(呼吸など)や血管反応性、さらには機械的ノイズであるという意見もある。次いで「Intrinsic Association of EEG and fMRI Signal Fluctuations in the Human Brain」Andreas Kleinschmidt, CEA, Neurospin, Université Paris-Sud, Gifsur-Yvette, Franceでは脳波とfMRIにおける自発的変動の相関が示された。「Neuronal Correlates of Spontaneous Fluctuations in fMRI Signals in Monkey Visual Cortex: Implications for Functional Connectivity at Rest」Amir Shmuel, Max-Planck Institute for Biological Cybernetics, Tuebingen, Germany and MNI, McGill University, Montreal, QC, Canadaでは、サルのV1におけるfMRIとニューロン活動(スパイク活動やLocal Field Potential)との相関が示された。fMRIの信号変化が血管反応性よりも、神経活動に起因する可能性が高いことが示された。最後に「Micro-scale Spatio-temporal Organization of Spontaneously Emerging Cortical States Observed with Optical Imaging and Voltage Sensitive Dyes」Amos Arieli, Department of Neurobiology, The Weizmann Institute of Science, Rehovot, Israelは神経活動をvoltage sensitive dyesを用いたoptical imagingで検証した結果を示した。シンポジウム全体としてはまとまった構成であったが、内容としては従来の研究結果の延長線にあるものが多かった。安静時の脳活動の自発的変動は、fMRI研究で初めて明らかになったものである。さらにその領域が特定の部分に限局していることや、機能的ネットワークが存在することなども同様である。脳にそのような機能(?)があること自体がすでに大きな驚きであるが、一体その存在理由は何であるのかがまだ不明確である。この自発的変動が障害されるとどうなるのか、発達や疾患、老化との関係はなど今後の課題がまだ多く残っている。

ORAL SESSIONS: Disorders of the Nervous System: Psychiatric
精神疾患に関するセッションであるが、なかなかの大作もあったが病気の本態を探るという点ではまだ困難が多いと感じた。

204 T-PM: Dopamine-induced Changes in Neural Network Patterns Supporting Aversive Conditioning:Andreea Diaconescu, Rotman Research Institute, Toronto, ON, Canada 嫌悪条件付けを行いながら、異なった群の被験者にプラセボ、ハロペリドール、アンフェタミンを投与した。PLSを用いて扁桃体と基底核、前頭前野などとの相関を見ると、ハロペリドールでは相関が低下しアンフェタミンでは逆に亢進していた。結果はもっともと思われたが、相関関係しか呈示せず、通常の差分における扁桃体の活動がどうであったか不明確であった。

97 W-AM: Pharmacological MRI of Cigarette and Placebo Smoking:Kimberly Lindsey, Behavioral Psychopharmacology Research Laboratory, McLean Hospital, Belmont, MA, USA fMRI内でタバコの煙を吸わせる大層な装置を作成して実験を行った。喫煙者を対称にして実験計画は精密であったが、結果としては対照条件(空気を吸う場合)において報酬系が賦活されるなど意図しない結果が得られた。意図しないというのは言いすぎかもしれないが、即ち喫煙者であるのでタバコに対する渇望が空気を吸う条件で返って賦活されてしまったということになろう。1つの結論としては、pfMRIは難しいということになった。

223 T-AM: Cortical and Subcortical Reward Prediction Error Learning in Psychosis:Graham Murray, Brain Mapping Unit, Department of Psychiatry, University of Cambridge, Cambridge, United Kingdom 最近流行のPrediction error課題が、統合失調症でどのような脳活動を引き起こすかを検討した。結果としては課題による賦活は主に基底核領域と前頭前野に認められた。SCHで活動が低下している領域は、中脳と腹側基底核領域であった。服薬していない群だけを対象とした解析でも同様の結果が得られたことから、薬物の影響は少ないだろうとしている。

166 M-PM: State or Trait? The Effect of Stressful-experience on Brain Activation Correlates with Neuroticism:Roee Admon, Functional Brain Center, Wohl Institute for Advanced Imaging, Tel Aviv Sourasky Medical Center, Tel Aviv, Israel これはかなりの大作で、イスラエル軍の医療研修を受ける前と後で(18ヶ月の間をおいて)情動刺激を呈示したときの扁桃体や海馬領域の反応を見た。扁桃体の活動は特に医療現場の写真が呈示されると亢進し、さらに性格傾向などとも相関したことからストレス脆弱性と関連していることが示された。海馬はむしろストレスを受けた結果として、情動的な経験を想起することで活動が亢進していた。扁桃体反応はストレス脆弱性の原因で、海馬の活動はストレス暴露の結果と考えられた。

220 T-PM: Decreased Information Transmission Efficiency in Schizophrenia.:Yong Liu, National Laboratory of Pattern Recognition, Institute of Automation, Chinese Academy of Sciences, Beijing, China 健常者と統合失調症の機能的結合性の相違を、安静状態のfMRIを用いて検討した。SCHでは脳の解剖学的領域間の結合性の低下が認められた。また罹病期間が長いほど、結合性も低下していた。最近の中国における画像研究は、大きな発展を遂げている。特に精神科領域では、症例数の大きなコホート研究なども行われているようである

Day 3:

Morning Workshops: The Measurement and Enhancement of fMRI Reliability
このシンポジウムでは、fMRIの信頼性の正しい検証に関する視点に関して述べられた。「Measuring and Improving Reliability」Lee Friedman, functionalimageanalysis.com, Newbury, OH, USAは、fMRIの信頼性について概観した。fMRIの結果は信頼できるかという質問には、今までにも多くの議論があった。多くの発表では信頼性をうたっているが、信頼性の低い研究は発表されないのではないかという疑問もある。fMRIの信頼性を検証する方法論に関しては発表によって大きな違いがあるが、統計学者らは測定系の信頼性に関して既に長い間の実績がある。演者はなかでもICC(1.1)という指標が最も有用性が高いとしていた。「A Comparison between the Reproducibility of BOLD, CBF, CMRO2 and Related Physiological Parameters Using Calibrated BOLD」Beau Ances, UCSD Department of Neuroscience, La Jolla, CA, USA では、BOLD, rCBF, CMRO2などの生理指標の再現性・信頼性が比較された。「Factors for Better Reproducibility across fMRI Studies and Multi-Centric Perspectives」Jean-Baptiste Poline, Neurospin, I2BM, CEA, Franceでは、信頼性はfMRIが認知科学や臨床検査として用いられるためには重要な点であるとして複数の施設でのfMRI実験の可能性について述べた。結論の1つとしては、個人間におけるfMRI信号の差は大きいが個人内では比較的再現性は高いのではないかということであった。しかし個人間の差に、最近の研究である遺伝的要因が関係している可能性については述べられなかった。

ORAL SESSIONS: Genetics: Chair: Thomas Nichols
今回のGeneticsのセッションでは、構造画像を多数例(百から数百例)のサンプルを用いて多型ごとに比較した研究が多かった。これはおそらく単純にfMRIではせいぜい数10例したサンプルを集めることができず、統計的なパワーが弱いことから来る結果であろう。

13 W-AM: Neural Basis of MPH-induced Improvement in Working Memory Differs by DAT Genotype in Childhood ADHD Chandan Vaidya, Georgetown University, Washington, DC, USA 子供のADHDにおける薬物であるメチルフェニデートの臨床効果が、ドーパミントランスポーターの遺伝的多型であるDATの9回と10回の繰り返し配列によって異なるかどうかを検証したもの。課題は比較的単純なワーキングメモリー課題であった。薬物の前頭葉活動に与える影響は、9/10型において10/10型よりも大きかった。従って10/10型の被験者は薬物効果において、やや劣る可能性があった。

549 M-AM: Genetic Analysis of Cortical Thickness in 8-year-old Twins. Uicheul Yoon, McConnell Brain Imaging Centre, Montreal Neurological Institute, Montreal, QC, Canada カナダ・モントリオール郊外のある地方では、遺伝的背景が比較的均一な地域がある。ここで数百例の8歳の双生児を集めて、構造MRIや認知機能などの計測を縦断的に行った。結果としては左半球の皮質の厚みは遺伝的要素が強く、右半球の皮質は環境的要素が強く現れているとした。

629 M-AM: Polymorphism in the Fibroblast Growth Factor-20 gene Modulates Grey Matter Volume in the Medial Temporal Lobe Herve Lemaitre, CBDB, NIMH, Bethesda, MD, USA FGF20の多型はパーキンソン病のリスクとして知られている。百数十例の健常被験者においてこのSNPを同定し、構造MRIの結果をVBMで検証した。その結果はマイナーアレルであるGのキャリアにおいて、海馬の灰白質体積が減少していた。この遺伝子が海馬に多く発現していることが原因と考えられた。パーキンソン病との関連性に関してはいまひとつ不明確であった。

280 T-PM: Genetic Influences over Cortical Gyrification: An Across Species Comparison of Heritability of Gyrification Index in Extended Pedigrees of Baboons and Humans Peter Kochunov, The University of Texas Health Science Center at San Antonio, San Antonio, TX, USA 構造MRIの一つの指標として、灰白質体積以外にも脳溝の走行やその脳表全体に対する割合なども重要である。脳溝を同定するソフトを開発して、それぞれ100例以上のヒヒとヒトで結果の相違を検証した。進化論的には全脳体積が増えれば、脳溝も深くなり脳表に対する割合が大きくなる。

285 M-AM: Brain-Derived Neurotrophic Factor and Volumes of Hippocampus and Amygdala in Adolescents Tomas Paus, University of Nottingham, Nottingham, United Kingdom and McGill University, Montreal, QC, Canada 成人ではBDNFのVal/Met多型により、海馬の体積が異なるという結果が複数報告されている。そこで数百例の若年被験者においても、同様の所見が再現できるかどうかを検証した。結果としては若年者では成人のようにBDNF多型による海馬体積の違いは認められなかった。

KEYNOTE LECTURE:
Mark D’ Esposito Where is the “Top” in Top-down control?
演者は前頭前野とワーキングメモリーに関する知見を以前から数多く発表している。まず演者の行ってきた実験結果が述べられた。次いで最近の話題である、前頭前野から視覚野に与えるフィードバックに関する実験結果が示された。それは前頭葉の活動が、視覚野における刺激選択性に影響を与えているというものである。顔と家を呈示した場合の賦活領域が、どの程度それぞれの刺激に選択的であるかを指標とした。該当する前頭前野をTMSで不活性化し、同様の実験を行うと視覚野の選択性が低下していた。また前頭葉障害患者を用いてfMRIを行うと、TMSと同様に患者では視覚野の選択性が悪かった。さらにコリン系を賦活して認知機能を促進する薬剤を用いると、視覚野の選択性は上昇した。これらの前頭葉から感覚野へのトップダウン機構が、知覚・認知処理に重要であることを示した。

Symposium:
Mapping Neuronal Current by Magnetic Resonance Imaging
血行動態に基づいたfMRIの原理は、基礎的または臨床的な脳の機能的マッピングにおける地位を確立したといえる。しかし各脳領域内または領域間の神経活動の動的メカニズムへの関心は次第に高まっている。一般的なfMRIはミリセカンド単位の時間経過に関しては、得られる情報は少ない。MEGやEEGは神経活動の時間的情報を得ることができるが、それぞれ脳の表面における変化しか捉えることができない。また逆問題の解決が困難なことから、神経活動の断層的な再構成は困難である。複数のイメージング手法を用いて時間的・空間的解像度を高める努力は行われているが、得られる信号の生理学的意味や空間的情報の不一致が問題である。原則的にMRIは神経電位変化の生理学的結果に感受性が高い。「Magnetic Resonance Imaging of Neuronal Currents」John George, PhD, Los Alamos National Laboratory, Biological and Quantum Physics Group, Los Alamos, NM, USAでは、神経電位変化がMRI信号として捕らえられるメカニズムについて言及した。神経電位変化をMRIで検知するのは、困難であるが極めて重要な研究と言える。もし十分な感受性と時間的解像度が得られるならば、それは脳機能の動的側面をイメージングするのに有益な手法となるだろう。「Direct Neural Imaging by Ultra Low Field MRI」speaker changed, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM, USAでは超低磁場MRIの手法で脳の神経電位変化を捉える方法を探った。「Dynamic MRI with Neural Current Dependent Contrast」Fa-Hsuan Lin, PhD, Martinos Center for Biomedical Imaging, Massachusetts General Hospital, Charlestown, MA, USAでは、超低磁場MRIでと多数のヘッドコイルを持いて、神経活動をリアルタイムで計測する手法を発表した。これらの研究結果はいずれもまだ基礎的研究段階であり、臨床応用や脳賦活検査に応用することには困難があった。

KEYNOTE LECTURE:
Denis LeBihan 「Water, membranes, and diffusion: Potential for neuroimaging
最初にBOLD信号の生理学的意味合いと、その限界について話された。次いで拡散画像を用いた脳賦活検査の結果を示し、拡散画像で得られる信号変化がBOLD信号よりも3秒間早く生じることについて述べた。この活動開始の速さはNIRSなどと比べても際立っていた。さらにその原理的背景から、水分子の組織内での分布や細胞の腫脹がMRIによって捉えられているのではないかと考察した。

Day 4

Morning Workshops: Prefrontal Cortex Contributions to Decision Making
最近の意思決定に関する研究結果では、前頭前野の異なった領域がそれぞれヒトの行動に重要な意思決定の認知過程に関わっていることが知られている。明らかに前頭前野の領域が(例えば背外側や内腹側部)、その他の連合野や基底核(例えば頭頂葉や尾状核)と比較して健常者や疾患群において強く関係している。このワークショップでは健常者の実験、モデリング、損傷脳、加齢、精神疾患などでヒトの意思決定機構を探った。「The Prefrontal Cortex, Real-World Decision-Making, and Normal Aging」Natalie Denberg, Department of Neurology, University of Iowa, College of Medicine, Iowa City, IA, USAでは主にギャンブル課題を用いて、正常な加齢現象が意思決定に与える影響について示した。中でも高齢者の低い成績を示す群について述べられた。「Higher Order Inference and the Role of Medial Prefrontal Cortex in Reward-Based Decision Making」speaker changedでは、内側前頭前野の意思決定に与える影響について、fMRIの結果を示した。「Neural Correlates of Emotion and Social Conduct」Daniel Tranel, Department of Neurology, Division of Cognitive Neuroscience, University of Iowa, Iowa City, IA, USAでは、内側前頭前野の損傷を受けた患者群での実験成績や、白質線維束の走行などが示された。「Differential Patterns of Cortical Activity during Category Decision Making in Aging and Disease」Thomas W. Weickert, School of Psychiatry, University of New South Wales and Prince of Wales Medical Research Institute, Randwick, NSW, Australiaでは、おもに統合失調症における意思決定課題を用いたfMRI実験の結果が示された。いずれも意思決定には内側前頭前野の活動が重要であることを報告した。しかしこの領域は情動や自律神経系、さらに流行のDefault modeにも関係しており理論的な統一が必要であると感じた。

ORAL SESSIONS: Emotion & Motivation: Emotional Processing
感情や情動のセッションであるが、どうしても表情や情動写真の認識の課題が主体になってしまう。これらは受動的な脳の反応であり、主に扁桃体などが関与していることは既に言われている。今後はさらに情動を惹起させたり、コントロールする研究が発展することが望まれる。

272 T-PM: Adult Attachment Security Predicts Maternal Brain Responses Using Functional MRI Lane Strathearn, Baylor College of Medicine, Houston, TX, USA 妊婦を出産前から被験者としてリクルートし、出産後に自分の子供の顔を呈示してfMRI実験を行った。さらに母親を“secure”と“insecure”な群に分けて結果を比較した。その結果では、secureな群では側座核の活動が亢進しておりinsecureな群では島の活動が亢進していた。

237 W-AM: Localization Accuracy of Current Functional Neuroimaging of the Human Amygdala: A Meta-Analysis. Tonio Ball, Epilepsy Center, Bernstein Center for Computational Neuroscience, Freiburg Brain Imaging, University Clinics Freiburg, Freiburg, Germany 最近までのfMRIやPET研究で、扁桃体の賦活を示した研究を網羅して、その座標軸を標準脳に乗せて分布を示した。明らかに扁桃体以外の領域にあるものまで、扁桃体の賦活として報告しているものが結構な割合で存在していた。また左扁桃体の外側核などにおける分布頻度が高かった。

213 W-AM: The Inferior Fronto-occipital Fasciculus Mediates Recognition of the Facial Expression of Emotions Thomas Grabowski, Department of Neurology, University of Iowa College of Medicine, Iowa City, IA, USA, Department of Radiology, University of Iowa College of Medicine, Iowa City, IA, USA DTIで後頭葉から側頭葉にかけての線維束を描出して表情認知との関連性を見た。被験者は100例以上の損傷脳患者で、これらの線維束の障害の程度と表情認知の関連性が認められた。

227 TH-AM: Maturational Changes in Facial Emotion ERPs from 6 to 30 years: Conscious Versus Nonconscious Perception Donna M Palmer, The Brain Dynamics Centre, Westmead Millennium Institute, Westmead Hospital, Westmead, Sydney, Australia, School of Psychology, University of Sydney, Camperdown, Sydney, Australia 総数で1000人以上の被験者を年齢別に分けてERPを行ったという大作である。その反面で電極数は極めて少なかった。主に表情認知で後期成分の振幅が年齢につれて変化していた。成人のパターンには12歳ころから移行した。

221 W-AM: Spatial Representation of Non-verbal Emotional Perception along the Superior Temporal Sulcus – fMRI reveals Audiovisual Integration Area Between Voice- and Face-Sensitive Regions Benjamin Kreifelts, Department of Psychiatry, University of Tuebingen, Tuebingen, Germany 解剖学的にSTSは前半部分と後半部分に分けられ、さらに後半部分は上行枝と下行枝に分けられる。解剖画像でその被験者群における確立分布を示した。その上で声と顔の課題を行い、聴覚は前半部で、聴覚・視覚の統合は中頃部分でそれぞれ行われることを示した。

KEYNOTE LECTURE: Olaf Blanke: Merging cognitive neuroscience with virtual reality to study body self-consciousness.
身体感覚と自己意識との関連性を行動実験、硬膜外電極、fMRIなどを用いて検証した。てんかん手術時の硬膜外電極では、自己身体意識は頭頂・側頭葉領域の活動と関連していた。さらに自分の姿をビデオに写して、さらにそれをバーチャルリアリティ空間で見せるなどの実験を行った。身体感覚が自己から遊離するような状態の時には、頭頂葉の活動が亢進していた。

Symposium: On the Relevance of Functional Neuroimaging to Psychology
このシンポジウムではfMRIと実験的認知心理学の関係について討議された。心理学位における脳機能マッピングの応用とその反響について検討された。「Beyond Phrenology: Neuroimaging and Cognitive Ontologies」Russell A. Poldrack, Department of Psychology, University of California Los Angeles, Los Angeles, CA, USAでは、骨相学と脳機能マッピングとの類似性について注意点をあげるとともに、新たな解析手法としてネットワーク解析の手法を示した。「What is Cognitive Neuroimaging For?」Max Coltheart, Macquarie Centre for Cognitive Science, Macquarie University, Sydney, NSW, Australiaでは、実験心理学的なモデル構築と脳機能マッピング実験では、必ずしもその目的が一致していないことをあげた。また実験心理学における問いかけに脳機能マッピング自体が十分に答えを出していないことに注意を述べた。「A Philosophy Primer for Neuroimaging」Greig de Zubicaray, Centre for Magnetic Resonance, University of Queensland, Brisbane, Queensland, Australiaでも、同様に実験心理学と脳機能マッピングの乖離について述べられた。「From Neuroimaging to Mental Structure: Reversed Associations, Monotonicity and Forward Inference」Rik Henson, MRC Cognition & Brain Sciences Unit, Cambridge, UKでは、演者の実験結果を元に、解析に用いられる一般線形モデルと実際のデータの相違について述べられた。実験心理学的仮説やモデルに基づいて行われるfMRI実験の結果が、その答えを出すというよりも新たな概念や学術分野の創生になっていることは間違いがない。新しいワインは新しい皮袋に入れろということわざもある。

KEYNOTE LECTURE : David van Essen: Mapping cortical structure function, and development using surface-based atlas
演者は1995年にもHBM学会で演者を努めたが、その時は専らサルの研究について話した。今回は主に、構造MRIを用いた解剖学的な研究について述べた。演者はSPMやVBMの手法と異なり、surface-basedの構造解析の有用性について述べた。また脳溝の発達は従来は頭蓋骨の体積に限度があるからと解釈されていたが、演者の意見によると白質線維束の発達が異なった領域の距離を短縮するために脳溝が発達するのだという。この解析手法で、統合失調症やウィリアムス症候群、自閉症などの解析を行った。最後に脳賦活実験の結果をデータベース化する事業を始めているので、協力をお願いしたいと結んだ。

ORAL SESSIONS: Emotion & Motivation: Reward & Motivation
主に最近の流行である意思決定の脳内機構が発表された。内側前頭前野との関連性が多かった。

190 W-PM: Tracking the Unchosen Option during Stochastic Choice in a Dynamic World Erie Boorman, Department of Experimental Psychology, University of Oxford, Oxford, United Kingdom, Centre for Functional MRI of the Brain, University of Oxford, Oxford, United Kingdom 内側および外側前頭前野と意思決定の関係について示した。

189 W-AM: Distinguishing Action Values from Chosen Values in the Human Brain during Reward-based Decision Making Klaus Wunderlich, Computation and Neural Systems Program, Caltech, Pasadena, CA, USA これも同じく報酬実験における意思決定と内側前頭前野の関係を示した。

Day 5

Morning Workshops: Fundamental and Clinical Neuroimaging Approaches to Reward Processing
神経画像と薬理学的さらに遺伝的手法を用いて報酬系の神経機構が解明されつつある。このワークショップでは異なった報酬(食物や金銭など)の処理や報酬系への遺伝的・内分泌的影響、さらには統合失調症や薬物依存の脳機能などに関する最近の進展について発表された。報酬系の神経機構は多くの行動過程(動機付けや学習、認知)に影響がある。またドーパミン系の障害や報酬系の病理を理解することから、理論的・臨床的応用が広い範囲に広がっている。「Sensitivity to Reward in Dependent Drug Users and Its Influence on Learning and Control」Robert Hester, Queensland Brain Institute, University of Queensland, Brisbane, Australiaでは、主にコカイン依存症の患者と健常者を対象としたfMRI実験の結果で基底核領域の賦活の相違を見た。「Rewards, Prediction Error, and the Emergence of Abnormal Beliefs in Psychosis」 Paul Fletcher, Brain Mapping Unit, Department of Psychiatry, Addenbrooke’s Hospital, University of Cambridge, Cambridge, UKでは、報酬課題やPrediction Error課題を用いて、統合失調症患者と健常者における基底核などの賦活の相違を発表した。「Mapping the Dopamine Response to Drugs and Stress to Uncover Risk Factors for Addiction」 Alain Dagher, Montreal Neurological Institute, McGill University, Montreal, Canadaでは、PETとracloprideを用いた受容体イメージングで賦活検査を行い、依存症患者と正常群でのD2受容体の変化を示した。領域としては腹側基底核の活動をモニターした研究が多かった。しかし同部位の活動は既に多くの研究結果があり、またヒト以外でも実験動物を用いて比較的容易に検証することができる。それらをヒトで行う必要性がどれだけあるのか、不明確なこと多かった。

KEYNOTE LECTURE : Aina Puce:Multimodal neuroimaging studies of social cognition
演者は以前から顔刺激を持いてfMRI実験を行い、主に上側頭回(STS)の賦活を報告してきた。この講演では、STSの視線や表情の変化に伴う活動の亢進について述べた。また顔刺激に声の刺激を同期させることで、社会的状況に類似した実験でSTSの活動を報告した。fMRI以外にはERPによって主に後期成分の電位変化を示した。将来的な展望として、STSやその関連領域の活動が社会的認知に関わる脳内機構を明らかにできると結んだ。

ORAL SESSIONS : Cognition & Attention: Executive Function

31 TH-AM: Effective Connectivity during Task Set Reconfiguration Rei Akaishi, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan ERPとTMSというあまり例を見ない組み合わせで、ある試行の前の試行の影響が、その試行の成否に影響を与えていることを示した。

51 TH-AM: The Great Mistake: Brain Responses to Own and Observed Errors during Cooperation and Competition Ellen R.A. de Bruijn, Max Planck Institute for Human Cognitive and Brain Sciences, Leipzig, Germany, Nijmegen Institute for Cognition and Information, Radboud University, Nijmegen, Netherlands
エラー関連課題で自分がエラーを起こしている場合と、競合している相手がエラーを起こす場合で脳内反応が異なることを示した。競合的状態では、内側前頭前野の活動は自分のエラーも相手のエラーも同じ反応を示した。しかし側座核の反応は相手のエラーだけに認められた。

90 M-PM: Motor Familiarity Modulates Mirror Neurons System Activity during Auditory Action Recognition in Sighted and Congenitally Blind Individuals Daniela Bonino, Laboratory of Clinical Biochemistry and Molecular Biology, University of Pisa, Pisa, Italy, Department of Psychology, University of Pavia, Pavia, Italy
ミラーニューロンを賦活する音から行為を思い出させる課題を行い、晴眼者と視覚障害者において脳内の反応が大きくは異ならないことを示した。このことは生まれながらの視覚障害であっても、音から行為を推測するためのミラーニューロンシステムが形成されていることを示している。おそらく正常者とは異なった行為のスキーマが形成されるのであろう。

CLOSING REMARKS:
ポスター発表は1400以上の数で、南半球での開催にもかかわらずその数は大きくは減少していなかった。内容としてはモデリング・解析が258、認知・注意が225、次いで神経精神疾が185、イメージング技術が157などの順である。口頭発表セッションはモデリング・解析が3、イメージング技術が3、神経精神疾患が3、認知・注意が3であった。これを見ても発表は新しい解析法、モデリング、画像技術などが主体になってきている。疾患群の研究も次第に数を増やしているようだ。通常の脳賦活検査を用いた感覚・運動系の発表は次第に数を減らしてきている。

昨年までは拡散テンソル画像のシンポジウムやワークショップが多くあったが、今回は同様のセッションはなかった。これはDTIが既に使い慣れた方法になってきていることをうかがわせるものである。ポスターでもDTIを採用した研究が急増しているようであった。解剖画像を用いた研究は、被験者数が百から数百と極端に多くなっている。イメージングと同時に遺伝的多型を調べた研究は、今回は少なかった感じである。おそらく有名な多型については、あらかた調べられてしまったのであろう。遺伝子研究では被験者数の多寡が問題になっており、あまりに少ない数では信頼性が問われることが多いようだ。

ワークショップも含めて、今年は意思決定、Prediction errorや報酬系と内側前頭前野の活動に関する発表が多かったが、次第にそのネタも尽きてきている印象はある。Default modeの発表がワークショップとシンポジウムの両方であったが、それほど時間を使う必要があるのかどうかが疑問であった。学会進行の点では、スライドの呈示ができなかったりするなどやや不備があった。また筆者のPCでは会場内でワイアレスLANが使えず、通信に困ってしまったことも付け加えておく。来年度は2009年6月18日から22日まで、米国サンフランシスコで開催される。

 

13th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping in Chicago IL, June 10 to 15, 2007

まず開会式に続いて述べられたことは、SPMなどに用いられているStereotaxic coordinate(標準脳座標)という概念の創始者である、フランスの脳外科医J. Talairachが昨年死去したということである。彼の生い立ちから医学生時代、医師になってからの足跡がスライドで示された。
続いて行われたTalaraich LectureはDaniel Kahneman(Professor of Psychology at Princeton University)による講演であった。彼は2002年のノーベル経済学賞の受賞者であり、その業績は経済学者としてのものではなくむしろ心理学者としてのものである。ノーベル賞は「心理学研究から経済学への統合された洞察、特に不確定性の中での人間の判断と意思決定について」の研究に関してであった。彼は「人は獲得と喪失に関して考察するが、短期的には喪失を獲得よりも恐れる」ということを実験的に示した。彼はノーベル賞を獲得した2人目の心理学者であるが、純粋な心理学のバックグラウンドを持つものとしては最初の受賞者である。講演は主に人の意思決定や判断が自動的な部分と制御された部分とに分かれていることを示した。また自動的な意思決定が、いかにヒトの精神活動に大きな役割を果たしているかについて話した。

Day 1

◎Morning Workshopsでは「Neuroimaging for Translational Medicine: Chair: Andreas Meyer-Lindenberg, NIMH/NIH, Bethesda, MD, USA」を聴講した。内容は神経画像が認知機能や神経精神疾患の理解に必須の検査になっていることを強調したものである。これは最近の研究目的である、神経画像を治療法の開発、応用、モニタリング、すなわちメディカル・トランスレーションに用いることと関係している。これにはもともと認知神経科学のために発達された方法論的あるいは実験的な神経画像の手法を、医療に合うように考え直さなくてはいけないことになる。このワークショップは、医用画像に関係した学術的および産業的なグループにより行われた。薬物の開発、治療対象や反応予測を決定するためのイメージング・ジェネティクス、薬物依存のマルチモーダル・イメージング、深部脳刺激のための目標領域設定などに関して発表された。
最初の演題は「Neuroimaging for New Therapeutics Development: Paul M. Matthews, GlaxoSmithKline, London, UK」であった。彼は新規の薬物開発には遺伝学と何らかのバイオマーカー、そしてイメージングの技術が必要であることを示した。新しい薬物の標的を探すのには、イメージング・ジェネティクスの手法が有用である。薬物の適切な投与量を決定するために、PETによる受容体イメージングを用いる。薬物動態の検査には薬理学的fMRIを行う。薬物に対する反応性もイメージングにより検査することが可能である。
次いで「Brain imaging in Substance Dependence: Michael N. Smolka, Technische Universität Dresden, Dresden, Germany」の発表があった。依存性のある薬物の投与によりドーパミンの放出が促されるが、これは依存の結果なのか原因なのかは不明確である。アルコール依存の患者に酒を見せると腹側基底核が賦活される。D4受容体の多型であるL型とS型で比較すると、基底核領域の賦活が異なっていた。PETによるD2受容体の活性低下は薬物依存の素質を示していた。
「Neuroimaging for Translational Medicine In Depression: Helen S. Mayberg, Emory University, Atlanta, GA,USA」では、うつ病で前部帯状回や前頭葉の血流低下があることが強調された。中でも帯状回25野領域の活性が重要であり、DTIで帯状回25野と内側前頭葉の線維連絡を調べると難治性の有無で異なっていた。
「Identification of Psychiatric Target Mechanisms Using Imaging Genetics: Andreas Meyer-Lindenberg, NIMH/NIH, Bethesda, MD, USA」では統合失調症とうつ病、自閉症に関するイメージング・ジェネティクスの結果が報告された。
総括するとイメージング技術を医学、とりわけ精神医学の分野で応用することの重要性について述べられた。一部はややモデルの呈示に偏りすぎた印象はあったが、今後の神経イメージングの発展方向の一つを示したものと思われた。これにはおそらく欧米では医療の現場で、脳賦活検査が可能なハード・ソフト環境が整って来ていることと関係があるのだろう。

◎LOC PRESIDENT’S SYMPOSIUMは「Imaging the Structural Connectivity of the Cerebral Cortex: Chair: Marsel Mesulam, Northwestern University, Chicago, IL, USA」と題して、脳が他の身体臓器と異なる特徴は関連する脳領域の結合性であることが話された。感覚を認知へと変換する機能は、この結合の構造に依存している。動物では結合の経路を研究するための方法が開発されてきたが、これらの手法は人間には応用することができない。認知神経科学が直面する大きな挑戦の1つには、人の脳の結合性を明らかにするということがある。このシンポジウムではサルにおいて確立された脳の結合性の原則と、人の脳における結合性のイメージングについて焦点を当てる。
「Tracing Pathways in the Monkey with Axonal Transport Methods: Jeremy Schmahmann, Massachusetts General Hospital, Charlestown, MA, USA」では、サルの脳におけるトレーサー法とDTIの結果を示した。ある皮質領域と他領域との結合は連合性、脊髄性、基底核性の3つ分けられる。連合性はさらに局所、近傍、遠隔に、脊髄性は交連性と皮質下性(橋)にさらに分類される。この特徴は皮質のどの領域でも同様と考えられている。
「Comparing Connectivity in Monkeys and Humans: Heidi Johansen-Berg, University of Oxford, Oxford, UK」では、DTIによるサルと人の結合性の相違点について発表した。DTIは質的情報が主体だが、一部は定量的情報も得ることができる。たとえば言語を持つヒトではブロカ野とウェルニッケ野を結ぶ弓状束は皮質脊髄路より線維結合が多いが、サルでは反対である。
「Connectional Anatomy of Language Pathways: Marco Catani, Institute of Psychiatry, London, UK」ではDTIで弓状束と言語機能について研究した。弓状束は右半球では少なく、特にブロカとウェルニッケを結ぶ線維が少ない。個人間で見ると55%は左で極めて多く、30%では左がやや多く、15%では左右が同等であった。発達過程による変化に関しても報告された。
DTIを正面から取り上げたシンポジウムで、最近の同手法の発展を考えると時を得た内容だと思われた。脳領域間の線維結合はサルで主に研究されてきたが、今後はDTIでヒトを対象に行われていくだろう。また種々の認知機能とDTIで調べた特定領域間の結合が関係しているという報告も多くなっている。DTIはT1画像などと比べて情報量が多く、機能画像との併用も興味深い研究となるだろう。

○Keynote Lectureは「Memory Systems of the Mammalian Brain」と題してLarry Squire, University of California – San Diego, San Diego, CA, USAが行った。内容は海馬とエピソード記憶に関する総説であった。新規な結果としては、空間記憶に関して人を何もない部屋に入れて、スタート地点から目隠しして歩かせ、止まった所からスタート地点の方向を示させるというものである。この課題は海馬損傷患者でも成績は良好である。最後に回転を加えると、成績のばらつきが大きくなるが、それも海馬損傷患者と健常者で違いはなかった。しかし遅延を加えると海馬損傷患者で成績が大きく低下した。Squireは記憶研究の大御所で、今までHBMで講演していなかったのが不思議なくらいである。しかしSfNなどでも聴講したことがあるので、やや新鮮味に欠けた。

◎Symposium:は「Mapping Genetic Influences on Human Brain Structure and Function
Chair: Hartwig R. Siebner, Christian-Albrechts-University, Kiel, Germany」と題して行われた。分子遺伝学の進歩は、神経精神疾患に関連した遺伝子における多くの変異や多型について明らかにしてきた。この発達は変化した遺伝子機能の分子的および細胞的理解の進歩とともにある。最近の研究は多くの神経精神疾患の神経遺伝学的な要素について確立したが、特定の遺伝形式がどのような表現型として変換されるかについてはまだあまり分かっていない。近年ではMRIやPETが、分子遺伝学と人の脳の形態的・機能的変化を結ぶことでこのギャップを埋める可能性が示されている。この臨床指向的シンポジウムでは、遺伝子によって生じた人の脳の構造と機能の変化に関する最新の神経画像研究の結果について、主に運動障害と統合失調症に関する研究を示した。
「MRI Morphometrics: Imaging and Diagnosis of Neurogenetic Syndromes: Richard S.J. Frackowiak Institute of Neurology, University College London, UK」では、VBMとジェネティクスを用いた研究について示された。ハンチントン病では尾状核の体積が低下しているが、発症していない保因者をCAGリピートの数で比較しても同様の結果であった。ジストニアではDYT1という遺伝子の変異が起こっているが、被殻の体積に遺伝子と表現型の交互作用が認められた。統合失調症ではPCM1の遺伝子において同様な交互作用があった。
「Schizophrenia Genes Converge on Structure and Function of Cortical Cognitive systems: Daniel R. Weinberger, Clinical Brain Disorders Branch, NIMH, Bethesda, MD, USA」では統合失調症と前頭葉の賦活に関する研究結果が述べられた。リスク遺伝子の有無により、健常者の前頭葉活性においても違いがあった。PPP1R1B遺伝子では基底核体積やn-back課題での基底核の賦活に違いがあった。COMTとGRM3遺伝子の交互作用が前頭葉の賦活に認められた。COMTとAKT1の交互作用もあった。
「Altered Structure-Function Relationships in Hereditary Dystonia: David Eidelberg, Department of Medicine, North Shore – LIJ Health System, Manhasset, NY, USA」では、遺伝性のジストニアとDTY1遺伝子の変異について述べられた。患者ではFDGのPETではPreSMAの代謝が亢進していた。DTIでは1次運動感覚野の直下の白質と小脳におけるFA値が低下していた。脳賦活検査では、SMAの活動が亢進していた。
「Motor Reorganization in Non-manifesting Carriers of a Parkin or PINK1 Mutation: Hartwig R. Siebner, Department of Neurology, Christian-Albrechts University Kiel, Germany」では、パーキンソン遺伝子の有無により、VBMで線条体の体積が低下していることが示された。
FrackowiacがfMRIではなくてVBMの結果について話していたので、興味深かった。Weinbergerの話はやはりSfNで聞いた内容と大きな違いはなかったが、gene-gene interactionについての結果が新しかった。まったく新規な多型をイメージングと結びつけるのは、困難があると感じた。またジストニアやパーキンソン病などの運動障害での結果は病因論的にも納得がいくのだが、精神疾患に関してはやはりまだ不十分という印象を受けた。

◎Keynote Lectureは「Visual Field Maps, Plasticity and Reading」と題してBrian Wandell, Stanford University, Stanford, CA, USAが行った。V1などの機能的領域では、どれでも同じような中心視野と周辺視野のマップが得られている。盲目の患者の目にstem cellを移植したところ、機能的な回復がfMRIで確認された。DTIでは言語能力の差によって、言語領域のFA値に違いが認められた。ここでもfMRIとDTIを縦横無尽に使って、臨床的な視覚障害の機能回復と神経画像を有効に結びつけている。
○Oral Sessionsでは「Disorders of the Nervous System – Mental Illness」のセッションを聴講した。
「Mean Diffusivity: A Biomarker for CSF-Related Disease and Genetic Liability Effects in Schizophrenia: Katherine L. Narr, University of California – Los Angeles, Los Angeles, CA, USA」では、統合失調症でMD値とT1値をROI解析した結果が示された。側頭葉においてMD値が患者群で高かったが、これはCSF領域の拡大と関連すると思われた。
「Impaired Ventral and Intact Dorsal Fronto-Striatal Functioning In Pathological Gambling: Michiel B. De Ruiter, AMC Medical Research, Amsterdam, the Netherlands」では、病的賭博患者とタバコ依存症患者と健常者でリバーサル課題のfMRIを比較した。賭博患者では獲得賞金額が少なかった。VLPFCの賦活が賭博患者とタバコ依存症で小さかった
「Differential BOLD Response to A Monetary Incentive Delay Task in Healthy Versus Depressed Subjects: Hongye Wang, NIH, Bethesda, MD, USA」では報酬課題でうつ病患者の側座核における賦活が少ないことが示された。扁桃体ではうつ病患者で賦活が大きかった。
「Neural Mechanisms of Anticipation and Receipt of Reward in Patients with Schizophrenia and Bipolar Disorder: Birgit Abler, University of Ulm, Ulm, Germany」では、双極性躁病(服薬中)では腹側基底核の賦活が少ないことが示された。
「Altered Dorsolateral Prefrontal Cortical Response and Connectivity in Patients With Major Depression: A TMS/PET Study: Shalini Narayana, University of Texas Health Sciences Center, San Antonio, TX, USA 」では、うつ病患者の前頭葉にTMSを行い、PETで脳血流値を調べたところ血流低下を認めた。
(文章の一部は学会抄録からの引用です)

○Morning Workshopsは「Brain Function at the Interface of Cognition and Emotion Chair: Wendy Heller, University of Illinois, Champaign, IL, USA」と題して行われた。このワークショップでは情動と認知の相互作用に関連する脳の構造と機能について焦点を当てた。認知または情動の神経機構に関する研究は多いが、この両者の相互作用についての研究はまだ少ない。認知と情動の相互作用は様々であるが、その処理方法と関連する脳構造はかなり異なっている。従ってこの領域の研究は新たな方向性を示すものと期待されている。

「Regional Brain Connectivity and the Effects of Emotion on Attention: Aprajita Mohanty, University of Illinois, Chicago, IL, USA」では、感情的ストループ課題とfMRIの実験について述べられた。左前頭葉は注意だけに関係し、背側帯状回は認知、吻側帯状回は感情にかかわっていた。不安傾向の高い被験者では扁桃体、海馬、島などの活動が高く、前頭葉の活動が低かった。吻側帯状回から扁桃体への影響は抑制性であり、前者は感情の統制に後者は感情の評価に関わっていた。

「Neural Mechanisms of Cognitive and Emotional Conflict: Tobias Egner, Northwestern University, Chicago, IL, USA」では葛藤条件における脳活動が研究された。直前の試行が一致で現在の試行が不一致の場合は、帯状回が賦活される。帯状回は葛藤の解消に関係する。ここでも吻側帯状回から扁桃体の影響は抑制性であった。

「How Cognitions Sculpt Emotions: High-Level Appraisal and Cognitive Emotion Regulation: Raffael Kalisch, Institute of Systems Neuroscience, University Clinic Hamburg-Eppendorf,Hamburg, Germany」では、感情の再評価は前頭葉の外側と内側部の活動を生じさせることを示した。IAPSを用いた実験のメタ解析では、陰性感情の減少と前頭葉活動の関係が分かった。しかし注視時間の低下が脳の賦活に関係している可能性もあった。

「The Processing of Emotion-Laden Information: Luiz Pessoa, Indiana University, Bloomington, IN, USA」では、扁桃体とFFAの活動は感情と注意により調節されていることが示された。感情的プライム刺激と中性ターゲット刺激を用いた実験では、普通の被験者はプライム刺激に気がついた場合だけで扁桃体が賦活された。プライム刺激への過剰反応者では、扁桃体の賦活がさらに高くなっていた。またHitではMissよりも扁桃体の賦活が高かった。
主にfMRIを用いて扁桃体と前頭葉の関連を調べた研究が発表された。課題はストループ課題、葛藤条件課題、感情の再評価、顔認知などでありそれほど新奇な内容ではない。前頭の中でも前部帯状回の活動が重要であり、この領域は扁桃体の活動に抑制性の影響を与えていることが示された。これらの結果を将来的にどのように発展させていくかに関しての考察に欠けると感じた。

◎Oral SessionsではGeneticsのセッションを聴講した。
「Modulatory Influence of the DRD2 Taqia Polymorphism on Negative Feedback Processingin a Probabilistic Learning Task: Poster #26 T-PM, Tilmann A. Klein, Max Planck Institute for Human Cognitive and Brain Sciences, Leipzig, Germany」では、DRD2の多型が確率学習に及ぼす影響について発表された。VTAからのドーパミンの投射は報酬予測と関係して内側前頭葉を賦活するが、この時D1は興奮性でD2は抑制性であると考えられている。確率学習課題で、A-のSNPを持つ者は確率の低い項目を避ける傾向があり、A+のSNPを持つ者は確率の高いものを選ぶ傾向がある。A-を持つ者は腹側線条体で賦活が強く、D2受容体が減少していた。

「Heritability of Cortical Thickness in a Large Adult Twin Sample: The VETSA Project: Poster #386 T-PM Lars M. Rimol, University of California – San Diego, San Diego, CA, USA」では、多数例の双生児研究でMRIの構造画像を比較した。314人(80組の一卵性、77組の二卵生、男性のみ、平均年齢56歳)の双生児で、灰白質の厚さの遺伝性は前頭葉と後部帯状回では高く側頭葉と前部帯状回では低かったことを示した。

「How Genes Modulate Reward Processing and the Relationship To Sensation Seeking: Poster #86 TH-PM Juliana Yacubian, University of Hamburg, Hamburg, Germany」では、複数の多型と報酬系の活動について発表された。報酬処理は主に腹側線条体で行われているが、この活動はギャンブラーで低いことが知られている。一般的には線条体の活動は5ユーロ儲けるほうが1ユーロ儲ける時よりも大きく、また儲ける確率が高いほうが大きい。ドーパミントランスポーターのVNTR(10Rと9R)やCOMTのVal/Met多型で比較すると、Val/Valかつ9RではphasicなDA放出が高い可能性が示唆された。

「Lifetime Trauma Exposure, Early Onset MDD and 5-HTTLPR Genotype Influence on Hippocampal Volume in a Young Female Twin Sample: Poster #265 T-AM Kelly Botteron, Washington University, St. Louis, MO, USA」では、双生児でうつ病を持つもので構造MRIを取った。大うつ病の双生児(276人)で5-HTTLPRの多型とトラウマの回数、海馬体積を検討した。大うつ病の有無は海馬体積との関係はなかったが、SS型ではトラウマが増えるにつれて海馬体積が増加していた。

「BDNF Val66met Polymorphism and Short-Term Experience-Dependent Plasticity in the Human Brain: Poster #372 T-PM Stephanie McHughen, University of Califonia – Irvine, Irvine, CA, USA」では、BDNF多型と運動野の脳賦活の関係について研究された。BDNF多型のVal/Val:15例とVal/Met:9例でfMRIの手指運動学習の実験を行った。1回目の実験では運動野と小脳の賦活が見られたが、Val/Metでは賦活が少なかった。2回目の実験では学習効果で賦活が少なくなるが、Val/Metでは賦活の低下が少なかった。またこれは信号の上昇分が少ないのではなく体積が減少しており、Val/Metでは経験による可塑性が異なるためと考えられた。

興味深いセッションであった。構造画像と遺伝因子を調べるためには、100人単位のデータを収集する必要があるということになりそうである。fMRIと多型研究は20から30人と被験者数は少なめであるが、これもかなり強固な仮説設定のもとに実験を進める必要がある。めったやたらにfMRIを行って片っ端から多型を調べたとしても、良い研究にはならないと感じた。

◎Keynote Lectureでは「Manipulative Neuroscience Based on Brain-Network-Interface」と題してMitsuo Kawato, ATR Computational Neuroscience Labs, Kyoto, Japanが講演した。最初に小脳のLTPにはカルシウムが関係していることを示した。じゃんけんのfMRIを行って運動野の活動を測定し、信号のdecodingをしてロボットの手で同じようにじゃんけんをすることが可能であった。将来的にはサルの脳活動をモニターして、その信号からロボットを動かすことを考えているという。日本のお家芸とも言えるroboticsの発表で、かつその分野の世界的権威でもあるDr. Kawatoの講演であった。聴衆は呻いており、学術的な内容とともに関西と京都地区の宣伝効果として有効性が高かった。

◎Symposiumは「A Multi-Level Perspective on the Neural Correlates of Perceptual Decision Making: Chair: Hauke Heekeren, MPI for Human Development, Berlin, Germany」を聴講した。われわれが意思決定をする時には、情報は解釈さらに翻訳されて行為となる。行為を導くために、脳はどのように感覚情報を解釈するのであろうか。感覚弁別課題を行っているサルにおける神経生理学的実験と計算モデル研究は、人の脳における意思決定過程を理解するための神経画像研究に道筋を付けてくれる。マルチモーダルな神経画像法と新しいデータ解析方法(脳波とfMRIの同時計測、脳波や脳磁図のソース解析、領域間の相互作用など)を計算モデルと組み合わせることで霊長類の意思決定過程の神経機構の理解を推し進めることが可能になる。

「How Does Experience Shape the Mechanism of Perceptual Decision Formation? Joshua Gold, Univeristy of Pennsylvania, Philadelphia, PA, USA」では一般的なサルの電気生理学的研究が述べられた。

「How Does Prior Probability Influence Perceptual Decision Making in the Human Brain? Hauke R. Heekeren, MPI for Human Development, Berlin, Germany」ではfMRIとEEGの同時計測などが取り上げられた。一般的に次の試行に対する蓋然性が増加すると、反応時間は減少する。数の大小を判断する課題では、試行の蓋然性が高くなると反応時間が低下し確信度が上昇する。この時ERPではContingent Negative Variation(CNV)やLateralized Readiness Potential(LRP)という波形が認められる。事前の蓋然性が上昇するとCNVやLRPに変化が生じるが、CNVは段階的に変化しLRPはOn-Offで変化する。この時にfMRIでは前頭葉、頭頂葉、視床などの活動が認められる。EEGとfMRIの同時計測では、蓋然性が上昇すると前頭葉や頭頂葉の活動は亢進し、逆に内側前頭葉や後部帯状回の活動は低下した。

「How is Band-Limited Cortical Population Activity Linked with Perceptual Choice? Tobias Donner Charite, Klinische Forschungsgruppe, Berlin, Germany」ではEEGのガンマ活動について発表された。意思決定に関係したガンマ波の活動は外側前頭葉において左右差を認め、反応を予測していた。視覚野のベータ波は結果の正答率を予測した。

「When Does the Brain Know That a Decision Is Difficult to Make? Paul Sajda, Columbia University, New York, NY, USA」では、顔認知課題とERP実験の結果が示された。顔認知課題のN170成分と後期の300msの成分では、後者のほうが行動指標と強く関係した。課題の難易度を増加させると後期成分を遅らせ、幅を広くする効果があった。

意思決定とマルチモーダルなデータ収集という最近のトピックを組み合わせたシンポジウムで、興味深かった。われわれの意思決定には、事前の蓋然性というものがかなり大きなウェートを占めることが強調された。またEEG・ERPと行動指標、fMRIと行動指標という対応はあるがEEG-fMRIという相関はなかなかないものだと思った。この両者は、前者はベクトルで後者はスカラーという、かなり異なった性質があり直ちに相関関係があるというわけではないのだろう。

午後のOral SessionではCognition – Perception & Awarenessを聴講した。

「Uncertainty and Predictability during Rapid Perceptual Decision-Making: Poster #15 T-AM: Philippe Domenech, Cognitive Science Institute, Lyon-Bron, France」では事前の蓋然性が上昇すると帯状回や下前頭回の活動が低下することを示した。中でも前部帯状回の活動は被験者の成績を予想する結果となった。

「Baseline Brain Activity Fluctuations Predict Somatosensory Perception in Humans: Poster #3 M-AM: Christophe Phillips, University of Liege, Liege, Belgium」では、刺激への気付きが減ることで、default mode networkの活動に変化が認められることを示した。帯状回や頭頂間溝、前頭葉の活動と意識的な知覚が関係した。
(文章の一部は学会抄録からの引用です)

◎Morning Workshopsは「Single-Subject Clinical Brain Mapping in Neuropsychiatric Disorders: Chair: Vince Calhoun, Institute of Living, Yale University, Hartford, CT, USA」を聴講した。脳画像で神経精神疾患の治療に関する情報を得ることは、長年その可能性が追求されてきた。しかしこのような臨床的疑問に答えるためにデータを統合する手法を開発することは、今までは困難であった。これは神経画像が主にグループ解析の結果に焦点を当てていたことによる。これらの手法の臨床的利用法には、単一被験者の特徴を得ることが必要になる。このワークショップでは、アルツハイマー病、統合失調症、てんかん、意識障害の4種類の神経精神疾患における最近の進展について発表された。臨床的な信頼性を高めるマルチモーダルな画像データ収集についても言及された。

「Schizophrenia: Vince Calhoun, Institute of Living, Yale University, Hartford, CT, USA」では、服薬中の統合失調症にfMRIを行いICAを用いて解析した。default mode network(DMN)の活動と側頭葉の活動が抽出されるが、DMNの活動は患者群と健常者群を区別するのに有用であった。

「Alzheimer’s Disease: Michael Greicius, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA」では、老化性疾患におけるfMRIの有用性について述べられた。fMRIがMCIからAlzheimerへの移行を検証したり、薬物に対する反応性について検討することに有用であるとした。PETによるPIBも有用だが、これは健常高齢者でも20-30%に陽性所見を認める。fMRIでは課題を行わない状態でのDMNの活動を研究した。単一被験者でICAを行いDMNの活動を見ると、信号が低下していた。診断目的では3Teslaで10分程度のスキャンが適当と考えられる。

「Seizure Focus Localization: Graeme Jackson, University of Melbourne, Melbourne, Australia」では脳波のスパイクと一致したBOLD活動を見た。てんかん患者の症例が提示された。

「Disorders of Consciousness: Nicolas Schiff, Cornell University, New York, NY, USA」では意識障害の患者に対するfMRIの応用について発表された。従来から昏睡または植物状態(睡眠覚醒リズム有り)から回復した症例がある。このような患者の脳機能の評価をfMRIで行うことが可能である。Minimal Conscious Stateでは話し声を聞かせるとfMRIで聴覚野の賦活が認められ、触覚刺激でもS1が賦活される。1年間隔でDTIを取ると、神経連絡に変化が認められる。

Day1のモーニングワークショップやシンポジウムとも関連して、臨床場面での有用な診断手法や脳機能評価方法について述べられた。重要なテーマであるが、また極めて困難な課題でもある。現実にschizophreniaではまだ役に立つとは言えないし、アルツハイマー病でも研究段階である。fMRIがてんかんでEEG以上に有用な検査になるとはまず考えられない。結局最後の意識障害患者における、残存する脳機能評価法または回復の指標というのが妥当なところか。しかしそれでも極めて興味深い内容であると思われた。

Oral Sessionsは「Emotion and Motivation – Reward and Decision Making」を聴講した。
「Effects of COMT Inhibition on Reward Processing: Poster #77 TH-AM: Aarthi Padmanabhan, NIMH/NIH, Bethesda, MD, USA」は、COMTとドーパミンと報酬系についての研究であった。COMTの抑制剤であるTacroponeを投与するとパーキンソン病には効果があり、作動記憶も上昇する。Met/Met11人とVal/Val9人で偽薬と薬物投与でギャンブル課題の脳活動を比較した。MetではValよりも眼窩部前頭葉などの活動が強かった。薬物投与では偽薬よりも扁桃体の活動が高かった。遺伝的多型と薬物の相互作用が前頭葉で認められた。

「Individual Differences in Placebo Effects Depend on the Response of Reward Anticipation Circuitry: Poster #88 TH-PM: Jon-Kar Zubieta, University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA」偽薬効果は前頭葉、帯状回、側座核、島などの活動と関係していることを示した。また側座核の活動は偽薬効果を予測していた。

「Reward, Loss and Recovery: Outcome Processing in the Brain of Rewards and Losses Can Depend on the Context Provided By A Previous Outcome: Poster #66 TH-PM: Daniel K. Campbell-Meiklejohn, University of Oxford, Oxford, UK」報酬系の活動はそのコンテクストと関係しることを示した。勝ってから負ける場合と、負けてから勝つ場合では活動が異なっていた。

「Exogenous Manipulation of Nucleus Accumbens Activation and Financial Risk-Seeking: Poster #98 TH-PM: Brian Knutson, Stanford University, Stanford, CA, USA」エロティックな写真を用いるとギャンブル課題で危険度の高い判断をすることを示した。エロティックな写真の条件と蛇などの写真の条件を比較すると、前者で特に側座核の活動が亢進していた。

「Reinforcement Learning and Evaluative Representation of Faces: Poster #382 W-PM: Predrag Petrovic, Wellcome Trust Centre for Neuroimaging, UCL, London, UK」無表情顔写真に対して50%の確率で電気ショックを与えた。この時に顔写真には視線が正面の場合と横向きの場合があった。電気ショックの影響は、扁桃体を賦活した。中でも学習効果が左扁桃体に認められた。視線が横向きの場合は扁桃体の活動が強かった。

◎Keynote Lectureは「Alternatives for fMRI Acquisitions, or k-space: A Great Place to Pace」と題してGary Glover, Stanford University, Stanford, CA, USAが講演した。彼は脳機能をMRIを使って計測する場合の様々な手法に関して話した。まず一般的に用いられているEPIの場合は、TEを長くするので信号の欠損が大きい。k-spaceを埋めるのにspiral sequenceを用いると、信号の欠損が少なくてすむ利点がある。GREでは特に1.5Tの場合に静脈効果が強くなるが、SEの場合はそれが少ない。RASERやSSFPなどのsequenceも有用である。CBF測定にはArterial Spin Labelingが有効である。CBVはVascular Space Occupancyで計測する。SEEP(Signal Enhancement by Extravascular Water Proton)について説明された。T1画像ではO2の変化を測定できる。その他にDiffusionやDirect Neuronal Current、Naを用いた画像について発表された。

◎Symposiumは「Repetition and the Brain: From Neurons to Computational Models Using Multimodal Approaches: Chair: Kalanit Grill-Spector, Stanford University, Stanford, CA, USA.」と題して行われた。経験に関係した皮質のダイナミックな反応の中で最も頑健なものは、刺激が反復して提示された場合の神経活動の低下である。この反応の低下は反復プライミングによる成績の上昇に関係し、また神経集団の機能的特徴を示すことにも用いられる。しかしこの神経機構については、まだ十分に分かっていない。ここでは、反復に関係した神経活動の低下を説明する3つの理論的モデルを考える。そしてこれらのモデルを実験的に支持する人とサルのMEGやfMRI、サルの電気生理学的実験、計算論モデルなどについて発表する。目標としては神経画像と神経科学的手法を実験結果と論理的モデルを結ぶことである。
Introductionでは「Review of Neural Models for Repetition Suppression」と題して Kalanit Grill-Spector, Stanford University, Stanford, CA, USAが講演した。反復抑制の神経機構はFatigueモデル(神経発火が減少する)、sharpeningモデル(少ないニューロンが発火する)、Facilitationモデル(発火の持続が短くなる)などで説明されていることを示した。

「The Dynamics of Repetition Suppression: MEG Data, Prediction Error, And A Neural Network Model: Rik Henson, Medical Research Council, Cognition & Brain Sciences Unit, Cambridge, UK」サルのITニューロンは刺激提示後約100msで反復抑制が認められる。ヒトでは脳波で200ms前後、MEGで300-400ms前後、fMRIでは数秒後にBOLD信号の低下が認められる。反復抑制は側頭葉の高次な領域で先に認められ、次いで後頭葉の領域で認められる。

「Can Increased Neural Synchrony Account For Repetition-Related Improvements in Processing and Behavior? Evidence from MEG: Alex Martin, National Institute of Mental Health, Bethesda, MD, USA」反復抑制はMEGでは150msで側頭葉に認められ、次いで300msに後頭葉に認められる。このことは、側頭葉から後頭葉へのフィードバックがある可能性を示している。てんかん患者の前部側頭葉切除術の前後でfMRIを行うと、術後のfMRIにおける反復抑制が認められなくなった。この結果は前部側頭葉が何らかの学習に関わっていることを示すものである。

「High Resolution fMRI Investigations of Repetition Suppression: Kalanit Grill-Spector, Stanford University, Stanford, CA, USA」反復抑制は反復の回数、時間、間隔などによって変化する。顔に対する抑制はFFAや後頭葉では認められるが、STSでは認めない。

Object-Selective Adaptation in the Primate Ventral Visual System From fMRI to Single Cells: Rufin Vogels, Lab. Neuro- en Psychofysiologie, K. U. Leuven Medical School, Campus Gasthuisberg, Leuven, Belgium」サルとヒトのfMRIでは同じような結果が得られていることを示した。
反復抑制のメカニズムは、ニューロンのネットワークにどのような形で学習した情報が保存されるのかを解明する上で重要である。また行動指標、EEG、単一ニューロン記録、fMRIなど多くのモダリティーで再現できるという点でも特筆すべき現象である。最近の結果では、反復抑制がより高次と考えられる領域で時間的に先行して生じていることが確かめられた。脳外科手術前後の実験では、側頭葉前部も反復抑制のメカニズムに関係していることが示されたことも興味深い。これらの点は、今後もホットな研究対象となっていくだろう。(文章の一部は学会抄録からの引用です)

○Morning Workshopでは「Navigated Brain Stimulation – Bridging Basic and Clinical Neuroscience: Chair: Synnöve Carlson, University of Tampere, Tampere, Finland」を聴講した。このワークショップではナビゲーションを用いた脳磁気刺激(NBS)における最近の発展について述べられた。
「Probing Human Thalamocortical Circuits with NBS/EEG: Marcello Massimini, University of Wisconsin, Madison, WI, USA」EEGとNBSの併用により、覚醒時と睡眠時の脳活動を比較した。深い睡眠の時に磁気刺激を行うと、脳波の反応は大きくなるが周辺への波及効果は少なくなる。覚醒時には脳波の反応は小さいが、周辺への波及は大きい。このことは深い睡眠時には神経の結合性が低下している可能性を示している。
「Tractography-Guided Navigated Brain Stimulation in Memory Research: Tuomas Neuvonen, Helsinki University Central Hospital, Helsinki, Finland」DTIとTMSを組み合わせた手法を発表した。S1を刺激した時の反応領域をseed領域としてDTIでtractgraphyを行うと、その結合領域は中前頭回に達する。S1の刺激間隔を記憶させる課題を行い、同時に中前頭回を300ms後に刺激すると反応時間が短縮した。
「Brain Stimulation in Brain Lesions and Degeneration: Jari Karhu, Kuopio University Hospital, Kuopio, Finland」ナビゲーションを使うと刺激領域を限定できるので、刺激強度を下げることができる。脳外科手術前にTMSを行って、M1などの同定をおこなうことで手術時の損傷を防ぐことが可能である。Alzheimer病ではTMSに対する反応性が低下している。
睡眠脳波とNBSの研究は秀逸であるが、DTIを用いた実験についてはやや手法に問題があると感じた。脳外科的なTMSの有用性については良く分かった。

Oral Sessionでは「Cognition – Multimodal Approaches: Chair: Anna Nobre, University of Oxford, Oxford, United Kingdom」を聴講した。

「Right Intraparietal Sulcus Activity Is Modulated By the Axis of Stimulus Configuration: Convergence between Human Lesion Data and Functional Imaging of the Intact Brain: Poster #30 W-PM: Rik Vandenberghe, K.U. Leuven, Universitair Ziekenhuis, Leuven, Germany」損傷脳研究では下部頭頂葉と角回が空間的注意と関係していることが示されている。fMRI実験では主に頭頂間溝が空間的注意課題で賦活される。患者群と健常者に同じ注意課題を行ったところ、両群の領域に一部オーバーラップする領域が見つかった。

Poster Presentationは数が1500にのぼるため、すべてを把握することは不可能であった。今回は主にgeneticsのsessionを中心に見たが、全部で20程の発表があった。fMRIを用いた研究では被験者数は20から47人程度である。ApoEの研究で203人ととりわけ多い研究があった。構造画像を用いた研究は被験者数が多く、ApoEで221人、PRODTで138人、双生児研究で157組などである。健常被験者を対象とした研究では、TPH2、Ach-A4、5-HTTLPR、COMT、BDNF、MAO-A、CAPONなど以前から知られている多型が多く用いられている。患者群を用いた研究では、ADHAとPten、SchizoとNRGなどがあった。課題はn-back課題が多いが、stroop課題、ストレス負荷、運動課題、オドボール課題などが用いられていた。

各セッションの印象はすでに述べたが、DTIの発表数が増加している印象を受けた。これは最近になり、撮像方法とソフトの開発が急激に進んだことによると考えられる。また全体を通してfMRIとEEG、fMRIとDTI、EEGとTMSなどマルチモーダルな手法を用いた研究内容が多くなっていた。従って単なるfMRIだけの研究では、インパクトが少ないことになってしまう。また患者群や高齢者などを用いた、臨床ベースの発表も増加していた。これはトランスレーショナル・メディシンのワークショップなどにも反映されている。しかし具体的にfMRIの結果をどのように臨床に反映させていくのかについては、まだ考える余地は大きそうである。また計算論的アプローチを加えることで、モデルの構築に客観性を持たせている発表が注目された。

来年度は2008年6月15日から19日までオーストラリアのメルボルンで開催される。(文章の一部は学会抄録からの引用です) 

12th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping in Florence, Italy, June 11-15, 2006

DAY1

Talairach Lectureは利根川進氏であったが、講演者の家族の都合とのことでキャンセルされた。

DAY2

Morning Workshops: Predictive and Prospective Coding, Chair: Alumit Ishai, University of Zurich, Switzerland
このワークショップはpredictive codingおよびprospective codingについて総括した。Predictive codingとは視覚刺激による予測を通じて逆方向性の神経結合が下位レベルの反応を導くことを意味する。prospective codingは行動を導くため、将来の事象を予測するような反応のことである。知覚学習と推論の理論的根拠を示し、動物実験とヒトのイメージング実験について述べられた。

Karl Friston, University College, London, UK:Prediction and Inference in the Brain: Implications For Cortical Responses
Prediction errorとcomputational modelについて述べたが、数学的な理論が主体で実際の実験結果の提示は少なかった。

Alumit Ishai, University of Zurich, Switzerland:Top-Down Modulation of Repetition Suppression
感情を表出した顔に関して、反復プライミングが起こるかどうかを調べた。RTは反復呈示により減少したが、これは無表情でも恐怖顔でも起こった。fMRIでは紡錘状回、扁桃体、島で反復呈示により信号が減少した。これは恐怖顔で無表情よりも大きかった。この結果は表情により行動指標と神経応答が異なっていることを示している。

Gregor Rainer, Max-Planck-Institute for Biological Cybernetics, Tuebingen, Germany:Prospective Coding in Monkey Prefrontal Cortex
サルのPFCにおける単細胞電極記録で、遅延時期(刺激呈示後1000-1500ms)の活動が後の刺激呈示を予測する反応が見られた。これはPFCのみで起こり、視覚野のV4では起こらなかった。次に反復刺激にノイズを加えて呈示すると55-65%のノイズの状態でV4の活動が最も大きくなった。この現象は新奇な刺激では起こらなかった。V4とPFCを同時に記録すると、両者の活動は同期して55%ノイズ条件で活動が大きくなった。Prospective codingはPFCの活動のみが関係し、Predictive codingはV4とPFCの相互作用により起こる可能性が示された。

Charan Ranganath, University of California at Davis, USA:Prefrontal Mechanisms for Prospective Coding
Von Rostuff Effectとは連続して刺激を呈示すると、新奇なまたは数の少ないカテゴリーの刺激はよく覚えているという現象である。これにはContexualな新奇性とStimulusの新奇性があるが、前者は背側経路の後者は腹側経路の活動が関与していた。この時に反復呈示した刺激では、PFCの活動が亢進していた。

Local Organizing Committee Symposium: A New Window on Fundamentals in Neuroscience:Chair – Pietro Pietrini
神経科学の最先端にあたる研究結果について、幾つかの異なった領域について報告された。いずれもイメージング研究とは異なる分野の研究が選ばれた。感想としては、ややまとまりのないシンポジウムと感じられた。またSfNと話題がかぶるという事態も生じてしまった。

Angelo Vescovi, Hospital San Raffaele, Milan, Italy:How the Brain Repairs Itself: Is There a Role for Neural Stem Cells?
Neurogenesisの話でperiventricularの領域から新生された細胞が嗅球まで行き、シナプス形成にいたるまでが2-4週間かかる。海馬でも同じことが生じるが、その役割はplasticity説とrepair説がある。臨床的にはNeural stem cellを多発性硬化症のマウスに注射すると、血管からBBBの破れた部分で脳領域に移行してミエリン形成が生じる。これによりマウスの神経症状が改善する。将来はヒトに応用することも可能であろう。

Chiara Cirelli, University of Wisconsin-Madison, Madison, WI, USA:Sleep and Genes: From Mechanisms to Functions
この話は昨年のSfNでの講演とほぼ同じなので省略する。ショウジョウバエを使った睡眠の実験について述べられた。詳しくはSfN2005の項目を参照のこと。

Keynote Lecture – Sleep, Waking and Information Integration:Giulio Tononi, University of Wisconsin, Madison, WI, USA
ノルアドレナリンが睡眠の調節に重要であるという内容で、睡眠と学習について解説された。睡眠中にTMSを行って同時に高密度EEGをとると、覚醒時にはTMSの反応が脳の広範な領域に広がるのに対して、睡眠中のTMSでは局所に反応が限局していた。この講演が本年度のTalairach Lectureに当てられた。

Symposium – Imaging Consciousness: New Methods and Approaches:Chair – Hakwan Lau, University of Oxford, Oxford, UK
最近の神経画像研究が、意識についての研究にどのように貢献しているかを総括した。計算理論、解析方法、新規な課題とイメージングにより意識を画像化し臨床応用を考える。しかし実験心理学的な手法と臨床医学的研究との間には、結果としてまだ大きな乖離があると感じられた。

Stanislas Dehaene, Cognitive Neuroimaging Research Unit, Paris, France:Distinguishing Conscious and Preconscious Processing with fMRI
単語を用いた意味プライミング課題で無意識的な処理が行われていることを示し、さらに顔を正面と3/4正面の顔で用いてもプライミング現象が起こることを示した。

Frank Tong, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA:From Brain Reading to Mind Reading: Decoding Conscious Content from Activity Patterns in Early Visual Areas
視覚領域では線分の傾きの選別はV1>V2>V3の順に強くなっている。しかしfMRIにおける3mmのvoxelの中では複数の傾きのコラムが重なって分布している。

Steven Laureys, Liege University, Liege, Belgium:Altered States of Consciousness
ヒトにおける意識状態の変化として、植物状態を上げて説明した。植物状態では開眼が生じていることが特徴である。また植物状態の患者のPETでは、いわゆるdefault mode networkの活動低下が特徴である。欠神発作や夜間歩行などの状態でも同様の領域の活動が低下している。

Keynote Lecture – Human Brain Mapping Using Natural Sensory Stimuli:Rafi Malach, Weizmann Institute of Science, Rehovot, Israel
通常のfMRI実験と異なり、自然な視覚刺激(ここではウェスタン映画を流している)に対する脳の反応を見た。被験者間で信号値の相関する領域が連合野にあり、extrinsic networkと呼ばれた。これは各被験者の中で相関が強い、intrinsic networkとお互いに相補的な関係にあった。脳内で感覚運動野が賦活している時をfMRIで計測し、その同じ時間に映画で何が映っていたかを調べると手の場面が多かった。映画鑑賞時に活動しない領域は、intrinsic network、すなわちdefault mode networkであり、自己に関連する領域であった。(文章の一部は学会抄録からの引用です)

DAY3

Morning Workshops:Decoding Brain States with Machine Learning:Chair: Luiz Pessoa, Brown University, Providence, RI, USA
fMRIに関する新規な統計的手法や学習理論で、知覚的または認知的な状態を予想することができることを示した。これらの手法は現在用いられている差分法によるものよりも、画像データからより多くの情報を抽出することが可能である。ややまとまりのないシンポジウムであった。

Jim Haxby, Princeton University, Princeton, NJ, USA:Distributed Neural Representation of Faces and Objects in Ventral Temporal Cortex
側頭葉における顔に特異的な領域と家に特異的な領域に関する話題。

Tom M. Mitchell, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, PA, USA:Statistical Machine Learning and Functional Brain Imaging
新しい統計モデルについて。

Luiz Pessoa, Brown University, Providence, RI, USA:Univariate and Multivariate Strategies For Prediction of Perceptual Decisions
恐怖顔→マスク顔→恐怖顔の判断という課題でROCカーブを描く。ACCとmPFCが賦活される。

Geraint Rees, University College London, London, UK:Decoding Awareness
V1をfMRIで撮像すると、1つのvoxelには多くのコラムが重なっているので分離できないことを示した。

Oral Session:Neuroanatomy:Chair: Stephanie Clarke, CHUV, Lausanne, Switzerland

Differences in the Molecular Architecture Between Dorsal and Ventral Visual Areas:Poster # 523 T-AM:Claudia Rottschy, Institute For Medicine, Juelich, Germany
ヒトの死後脳で腹側と背側のV3におけるベンゾジアゼピン、セロトニン、アセチルコリンなどの受容体を調べた。V3の背側と腹側では受容体の分布が有意に異なっていた。視野の上半分と下半分の違いが関係するのかもしれないと考察されていた。

Identifying Pathways to Blindsight in Hemispherectomized Subjects Using DTI:     Poster # 470 T-PM:Sandra E. Leh, McGill University, Montreal, QC, Canada
てんかんの手術で大脳半球の一方を切除した患者を使って、blindsightの実験を行った。blindsightとは視覚機能を喪失しているにも関わらず、視覚的な弁別課題でチャンスレベル以上の成績を示すことである。DTIで上丘からの線維束を調べると、blindsightが生じている患者では他領域への線維連絡が多かった。

Age Correlates of Grey and White Matter Density Over the Human Lifespan:Poster # 411T-AM:Geoffrey C. Tan, Institute of Neurology, London, UK
多数例の健常者において灰白質と年齢の正の相関があるのはMTLであり、負の相関があるのはPFCであった。

Keynote Lecture – Past, Present, and Future of MEG in Cognitive Neuroscience:Riitta Hari, Helsinki University of Technology, Espoo, Finland
MEGの開発初期の歴史から、最近の全脳型の装置での研究までを概説した。将来的にはfMRIとMEGの実験結果の統合が課題であるが、特に刺激呈示後0-0.2秒までの反応はMEGに優位性がある。それ以降は両者でおおむね同じ反応を測定していると考えられる。MEGの第1人者の発表で、会場から大きな拍手が起きていた。

Symposium – Neuromodulation to Promote Recovery from Stroke: Are There Neuroimaging Markers to Direct Individualized Interventions?:Chair – Franca Tecchio , ISTC-CNR, Rome, Italy
脳血管障害患者における感覚運動機能の障害は先進国では大きな問題となっている。臨床的な回復に貢献するものとして、脳の可塑性が重要である。可塑性とは同じ入力を受けた時の神経の出力を変えることができる能力をいう。この可塑性を上げることのできる新しい手法について述べた。TMSを含めたニューロイメージングの臨床的有用性を示した貴重なシンポジウムであった。

Leonardo Cohen NINDS, NIH, Bethesda, USA:Neuromodulation after stroke: strategies to enhance training effects in neurorehabilitation
運動野(M1)の損傷で麻痺がある場合に、損傷による直接的影響の他に健常側のM1から患側のM1に抑制がかかっていることが知られている。患側の機能を上げ、健常側の機能を低下させることでリハビリテーションに良い結果が得られる。ここにTMSや電気刺激を用いることが可能であることを示した。

Maurizio Corbetta Washington University School of Medicine, St. Louis, USA:Neural Basis of Spatial Neglect Recovery
空間無視は右半球の腹側経路(側頭頭頂境界域)の障害による。この領域の機能的左右差が影響しているため、TMSを応用することで無視を改善させることができることを示した。

Keynote Lecture: Where, When, What: From Brain Imaging Data to Neural:Network Models and Back:Rainer Goebel University of Maastricht, Maastricht, The Netherlands
Brain Voyagerの開発者であるDr. Goebelのレクチャー。ニューラルネットワークモデルの話であった。

Oral Session:Emotion and Motivation I:Chair: Brian Knutson, Stanford University, Stanford, CA, USA

The Neural Basis of Economic Decision-Making in Two-Players Reciprocal Trust Games:Poster # 367 TH-AM:Frank Krueger, NINDS/NIH, Bethesda, MD, USA
mentalizingはmPFCの活動が関係している。さらに信頼もmPFCの活動が関係している。

Hemispheric Differences in the Amygdala Response to Gaze Shifts and Emotional Eyes:      Poster # 54 T-PM:Jillian E. Hardee, West Virginia University, Morgantown, WV, USA
目の周囲のみの画像を刺激として用いてfMRIを行った。左扁桃体は恐怖顔でのみ賦活されたが、右扁桃体は恐怖、横目、笑顔、真顔のいずれでも賦活された。

Facial Emotion Processing From Childhood to Adulthood: An Event-Related Potential Study of Maturational Changes:Poster # 44 T-PM:Donna M. Palmer, The Brain Dynamics Centre, Westmead, Australia
300人以上の被験者を用いて、各年代の被験者で表情認知課題でERPを行った。ERPの波形としては、14歳以上で成人のパターンになった。

Resting State Cortical-Subcortical Networks For Salience Processing and Executive Control:Poster # 16 T-PM:William W. Seeley, UCSF Memory and Aging Center, San Francisco, CA, USA
Default mode networkの活動のうちでも、特にACCの活動は被験者の不安尺度と正の相関を認めた。(文章の一部は学会抄録からの引用です)

DAY4

Morning Workshops:Recent Advances in Cross-subject Voxelwise Analysis of DTI Data:Chairs: Steve Smith, FMRIB, Oxford, UK, Tom Nichols, University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA
DTIデータを被験者間でvoxelwiseに比較する手法について述べられた。位置あわせや統計手法の問題点について議論された。DTIは発達や疾患による影響を敏感に反映することから、このような議論がニューロイメージングにとって重要であると考えられた。DTIに関する貴重なワークショップであった。しかし特定の手法(FSL)を使った研究結果が発表されていたので、もう少し広く研究者を集めるべきだと感じた。

Steve Smith and Tim Behrens, FMRIB, Oxford, UK:TBSS: Voxelwise Analysis of FA Data
DTIデータは位置あわせ(alignment)が難しい場合がある。FA画像でこれがうまくいかないと、群間の有意差となって現れる。(Gong, 2005参照)Tract Based Spatial Statistics(TBSS)はこの点において優位性がある。この手法は、1.non-linearのregistration(IRTK)を行い、2.mean FA画像を作成し、3.skeltnize(mean FA画像で)を行いobjective tract mapを作成し、4.各被験者のFA画像と照らし合わせて、skeltonを移動させる、というstepで行われる。Schizophreniaと対照との比較では、通常のVBMでは脳室の拡大により視床部分に有意差があるように出てしまう。TBSSではこれが少ないことが示された。

Tom Nichols, University of Michigan, Ann Arbor, MI, USA:Inference in Weird Spaces and Dimensions: MEG Meshes White Matter Skeletons
DTIの統計に関する話

Jonathan Taylor, Stanford University, Stanford, CA, USA:Voxelwise Statistics on the Full DTI Tensor
DTIの統計に関する話。

Symposium – Emerging Concepts in Cerebellar Research:Chair – Nancy Andreasen, University of Iowa, Iowa City, IA, USA
ニューロイメージングでは小脳に関する研究も多いが、このシンポジウムでは小脳の形態、発達、機能的局在、神経回路などについて概説した。しかしいずれも従来の研究からそれほど進展しているようには感じられなかった。特にAndreasenのオーガナイズなので精神疾患に関する話題も期待されたが、それ程興味深い話はなかった。

Ronald Pierson, University of Iowa, Iowa City, IA, USA:Detailed Study of Variability in Cerebellar Morphology, Foliation and Functional Localization
小脳は体積では中枢神経系の15%を占めるに過ぎないが、シナプスの数では実にその50%を占めている。schizophreniaと健常者の比較では、下後部の体積が患者群で小さい。また上後部の体積は陽性症状と負の相関がある。

Jay N. Giedd, M.D., Child Psychiatry Branch NIMH, Bethesda, MD, USA:Unique Developmental Features of the Cerebellum During Childhood and Adolescence
2000人(半分は健常者)からの4000個のスキャンのデータ解析では、以下の3つの点が分かった。1.大脳より成熟が遅い。2.性別差があり、身長や頭蓋内容積で補正しても男性で体積が大きい。3.大脳と比べて遺伝的に規定される要素が少ない。これらは精神疾患の発症に関係すると考察された。

Wolfgang Grodd, Ph.D., University of Tuebingen, Tuebingen, Germany:Functional Localization in the Human Cerebellum
小脳の解剖学的標準化を単純にTalairach spaceに合わせるだけでなく、より詳細に行った。その結果、fMRIで小脳のsomatotopyがより明確になった。小脳がtimingやsingingに関係することも分かった。

Peter L. Strick Ph.D., University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA, USA:Cerebellar FLoops with the Cerebral Cortex: Circuitry for the Control of Movement, Cognition, Perception and …
小脳は古典的なM1との連絡や運動機能だけではなく、前頭前野との神経連絡もある。さらに小脳の歯状核から視床を経て基底核へ至る経路もある。従って小脳は運動機能以外にもさまざまな高次機能に関係している。

Keynote Lecture: Reward Processing and Social Exchange:Read Montague,Baylor College of Medicine, Houston, TX, USA
サルの研究では、腹側基底核は最初は報酬が与えられた時だけ活動する。しかし次第に報酬が予測された時に活動するようになり、最終的に報酬時には活動しなくなる。その後報酬を与えないと今度は活動が低下する(catch trial)。fMRIで他者を信頼する課題を行わせると、相手に対する信頼感が出てくると腹側基底核の反応が早く生じるようになってくる。報酬と信頼という異なった概念を、サルの単一細胞記録とヒトのfMRIで統合した興味深い発表である。

Oral Sessions:Imaging Techniques II – DTI, MRI, and MRS:Chair: Carlo Pierpaoli, National Institutes of Health/NICHD/LIMB, Bethesda, MD, USA

Fully Automated Diffusion Tensor Imaging (DTI) Based Parcellation of the Human Cortex – Validation, Reproducibility and Scanner Independence

Poster # 106 W-PM:Johannes C. Klein, University of Oxford, Oxford, UK
SMAとPreSMAとの区別や、BA44とBA45の区別を付けることができるという内容。

The Impact of fMRI-guided DTI Fiber Tracking in Combination with Advanced Tracking Techniques:Poster # 153 W-AM:Philipp Staempfli, University of Zurich, Zurich, Switzerland
fMRIで賦活する領域を決定し、それに基づいてガイドされたDTIの線維追跡。15方向、b=1000、1.7×1.7×2.1mmで撮像している。

Cortical Reconstruction Using Topology Preserving Tissue Classification:Poster # 73 W-AM:Dzung L. Pham, Johns Hopkins University, Baltimore, MD
surface reconstructionのための新たなalgorithmの開発について。

White Matter Fiber Orientation from High Resolution Structural Scans and DTI in Fixed Brain Samples:Poster # 137 W-AM:Alex J. de Crespigny, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA
ヒトの死後脳を使いT1を50-100μmの解像度で、DTIをb=4000でとる。この両者を組み合わせて詳細な白質の線維連絡を画像化する。 (文章の一部は学会抄録からの引用です)

DAY5

Morning Workshops:Understanding Others: Stimulation and Theory of Mind Reunited:Chair: Christian Keysers , University of Groningen, Groningen, The Netherlands
われわれの脳はどのようにして他者の心の働きを理解するのだろうか?このシンポジウムでは、この問題に関して今までは関連がないと思われていた3つの話題を組み合わせることで答えを出そうとした。それは、1.ミラーニューロン、2.感情に関連した脳領域、3.心の理論である。最近話題の多いSocial Cognitive Neuroscienceに関する発表で、興味深かった。

Christian Keysers, University of Groningen, Groningen, The Netherlands:Imaging and Monkey Studies Suggest a Unifying Principle For Social Cognition
「ミラーニューロン(intuitive)」対「心の理論(reflexive)」について考察した。ミラーニューロンは他者の観察を通じて、行動の運動表象を構成する。このミラーシステムは主に運動前野、下部頭頂葉、側頭-頭頂境界域などから構成されている。例えばヒトがロボットの腕の動きを見る時より、ヒトの腕の動きを見る方が頭頂葉の賦活は大きい。また先天的な両腕の欠損患者におけるfMRIでは、健常者同様の運動領域の賦活を認めた。健常者では腕の運動と足の運動を見ている時のミラーニューロン領域活動は同じであった。手へ痛みを与えている場面を見る時に、手の領域に賦活が認められる。この賦活の程度は、被験者のempathy scaleと正の相関あった。触覚の場合はSII領域が関係する。他者が不快な臭いをかいでいる場面を見ている場合に、左島部が賦活する。この時もempathy scaleと賦活が正の相関をする。

Tania Singer, University College London, London, UK:Empathy and Theory of Mind: Two mechanisms for the Prediction of Other People’s States
cognitive perspective taking(= mentalizing)対 empathyの相違について。自己と他者へ痛み刺激はACCや島を賦活し、その程度とempathy scoreが相関する。Conducting disorder(DSM)では、VBMで島の体積とempathy scoreが相関する。側座核と復讐欲求の程度が男性では相関するなどの結果が報告された。

Jason Mitchell, Harvard University, Cambridge, MA, USA:Mentalizing About Similar and Dissimilar Others: Evidence For (At Least) Two Routes to Understanding Others’ Minds
Autistic Spectrum Disorder(ASD)とAlexithymiaについての話で、ASDではintrospective(内省的)課題でのmPFCの活動が健常者より低下している。Alexithymic Scaleと島の活動に相関がある。

Oral Session:Genetics:Chair: Ahmad Hariri, University of Pittsburgh School Medicine, Pittsburgh, PA, USA

Neuroimaging Endophenotypes Associated with the COMT Val108/158Met Polymorphism:Implications for Psychiatric Disorders of Emotion:Poster # 649 TH-AM:Lea Williams, The Brain Dynamics Centre, Sydney, Australia
COMT Val/Metの多型で、Met/MetはDopamineレベルが上昇している。これは感情やうつ病に関連する。298人の白人被験者で顔課題を行った結果では、Met/MetではmPFCや扁桃体の恐怖顔に対する活動が亢進していた。

Additive Effects of Genetic Variation in Dopamine Regulating Genes on Working Memory Cortical Activity in Human Brain:Poster # 654 TH-PM:Alessandro Bertolino, University of Bari, Bari, Italy
COMT Val/MetとDAT VNTRの2つの多型を見た。DAT多型では、ACCの活動は9 repeat>10 repeatであった。中でもVal/Val+9 rep/9 repではACCとPFCの活動が大きかった。

COMT-genotype Predicts BOLD Signal and Noise Characteristics in Prefrontal Circuits:Poster # 671 TH-AM:Georg Winterer, Johannes Gutenberg-University, Mainz, Germany
COMT Val/Met多型についての研究。Dopamineは神経活動のS/N比に影響を与えるという報告がある。その神経活動のノイズが、Schizophreniaで大きいという仮説がある。visual oddball課題ではMet/MetでACCの活動が大きく、またICA解析でノイズ成分が大きいことが分かった。

Polymorphisms of the Dopamine D4 receptor and Brain Development in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:Poster # 651 TH-AM:Jay Giedd, National Institutes of Health, Washington DC, USA
DRD4とADHDに関する研究。DRD VNTRの7 repeatは酵素活性が低いことが知られている。T1画像で皮質の厚さを見ると、右PFCと頭頂葉でADHD<CTLである。特にADHDの7 repeatでは右PFCの厚さが低下していることが分かった。健常群との差は8歳で最も大きく、16歳では差がなくなっていた。

Genetic modulation of Striatal Function and Frontostriatal Connectivity by PPP1R1B Encoding DARPP-32:Poster # 642 TH-PM:Andreas Meyer-Lindenberg, NIMH, National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA
PPP1R1BはDopamine受容体に関連するたんぱく質であるDARPP-32をコードしており、基底核に発現することが知られている。PPP1R1Bの多型はSchizophreniaのリスクを高め、認知機能にも関係していることが報告されている。この多型により基底核の賦活の低下や、PFCと基底核とのconnectivityが異なっていることがfMRI実験で分かった。またVBMでは基底核のvolumeも低下していた。

Oral Session:Emotion and Motivation II :Chair: John O’Doherty, University College London, London, England

Multimodal Neuroimaging of Functional Changes of the Reward System Associated with Healthy Aging:Poster # 339 TH-AM:Jean-Claude Dreher, CNRS, Bron, France
報酬系の反応をfMRIで高齢者と若年者で比較した。基底核と前頭前野では高齢者で活動が低下していた。F-dopaを用いたPETでも同様であった。

Insular Activity Reflects Individual Differences in Negative Affect Independent of Autonomic Arousal:             Poster # 85 T-AM:Katja Meriau, Berlin NeuroImaging Center, Berlin, Germany
陰性感情と交感神経系の覚醒度を高覚醒者と低覚醒者で比較した。島部の活動と陰性感情スコアが相関した。皮膚電気反応と島、視床、基底核の反応が相関していた。

Drug Wanting and Alcohol Use Predict the Ventral Striatum Dopamine Response to d-Amphetamine: A PET [11C] Raclopride Study:Poster # 334 TH-PM:Kevin F. Casey, McGill University, Montreal, QC, Canada
Raclopride PETで薬物使用経験者と未使用者のDopamine BPを比較した。使用者ではアンフェタミン負荷時の反応が低下していた。またBPに対する影響は男性より女性のほうが強かった。

The Role of Mirror Neurons and Theory of Mind in Face-to-Face Interactions: A fMRI Approach to Empathy:Poster # 3 T-AM:Martin Chulte, Research Centre Juelich, Juelich, Germany
心の理論はperspective takingや自己/他者の区別に関係している。自分と他者の感情評価では自分>他者でmPFC、PCC、側頭頭頂境界域の活動に違いがあった。

Closing Comments: Peter Fox, Past Chair, OHBM
今年の参加者は演題だけで2600にもおよび、過去最高であった。オーラル・セッションにGeneticsを加え、複数並行に開催するなど新規の構成をとったが問題はなかった。来年はシカゴ(June 10-14, 2007)で、その次はメルボルンで開催される。次回の学会会長であるDr. Mesulamが挨拶した。最後にlocal organizing committeeからの挨拶で学会は終了した。

全体的な印象としては、PETやfMRIによるactivation studyの発表だけではなくTMS、DTI、VBMなど他のモダリティーが加わってきつつあると感じた。さらに遺伝子解析を用いたり、臨床的研究などが加わってくるとHuman Brain Mappingの独自性が少なくなってくるのではないだろうか。Local Organizing Committeeのシンポジウムなどにも現れたように、今後はSociety for Neuroscienceとの異同が難しくなってくると思われる。(文章の一部は学会抄録からの引用です)

 

11th Annual Meeting of Organization for Human Brain Mapping in Toronto Canada,  June 13-16, 2005

この学会は磁気共鳴画像(MRI)、陽電子放射CT(PET)などの神経画像や脳波、脳磁図などの生理学的計測方法を用いて、主にヒトの脳機能を非侵襲的に研究した結果を扱っています。近年は今回も含めて演題数が1500を超えるなど、年々と参加者数が増加しています。私は研究結果をポスターとして発表しました。この研究結果には多くの研究者が興味を示し、ポスターの前で立ち止まり説明を求めました。また用意した研究結果の要約を手にする研究者も多く、コピーがすべてなくなる程でした。旧知の研究者も私の実験結果に興味を示し、長い時間議論を行ったことも成果の1つでしょう。

本学会は早朝から多くのセッションが組まれており、最新かつ最先端の研究結果を知ることができる点で極めて有用です。さらに将来の方向性を探るためにも本学会に参加できたことは研究者として喜ばしいことだと思います。以下に、私が聴講した発表の中でも特に重要と思われるものをまとめます。

第1日目では「Genetics and Brain Mapping」と題したワークショップが開かれました。ここでは統合失調症での灰白質の減少が主に海馬と前頭前野で見られDISC1とTRAXの遺伝子変異と関連することが示されました。しかし遺伝子研究での群間比較の難しさや注意点も考慮すべきであることが強調されました。

「Beyond BOLD: Alternative Approaches to Studying Brain Function and Dysfunction」と題したシンポジウムでは、ヒトにおける1次視覚野の発達やサルにおける微小電極刺激をfMRIの最中に行う手法が報告されました。さらにc-fosやzif268などのimmediate early geneを用いたmolecular mappingや、PETのレセプターイメージングの結果が示されました。

「Inhibitory Control in fMRI: Application of Basic Research to Psychopathology」と題したシンポジウムではコカイン中毒と前頭葉の抑制機構について、特に前部帯状回の反応が低下していることが示されました。

一般講演で特に興味深かったのはHIV/AIDSの症例で大脳皮質の厚みが低下しており、それが認知機能低下と結びついているという発表でした。

第2日目には「Emerging Magnetic Resonance Techniques for Neuroscience」と題して、fMRIの計測における定量化の問題や拡散画像を用いた視床と皮質の線維連絡について述べられました。またヒトのfMRIにおける基準値の問題として、安静時には脳のエネルギーの80%が消費されており、知覚や認知に関与するエネルギー量は3%程度に過ぎないことを示しました。

続いてKeynote LectureとしてDaniel Weinbergerが「Imaging Phenotypes and Genetic Mechanisms of Psychiatric Illness」と題した発表を行いました。ここではいわゆるimaging genomicsの研究手法が取り上げられ、BDNFと5-HTTLPRの多型性の相互作用について述べられました。

一般演題の中で特に注目したのは「Distributed Population Codes in the Primary Motor Cortex of Violinists」と題されたもので、プロフェッショナルのバイオリニストは一般の健常対照者と比較して巧緻運動を行っている時の左第3指に該当する運動領野の活動が異なっていることを示しました。

第3日では「Functional Neuroimaging of Sleep: Why, When and How?」というワークショップが興味を引きました。PETによる研究ではREM睡眠時には覚醒時よりも内側前頭前野と辺縁系の活動が高く、反対に覚醒時には前頭葉、頭頂葉、側頭葉、視床の活動が高まっていることが示されました。睡眠時無呼吸症ではMRIによって上気道の閉塞が確認できることが示され診断に有用であるとしていました。うつ病ではREM期で活性が高まっており、不眠症では脳幹部の不活化が不十分であるのが睡眠薬によって改善することが分かりました。続いて断眠によって計算課題に対する脳賦活は低下するが、言語的課題による賦活は亢進することが示されました。脳波の研究では、覚醒時間が長くなると1-4Hzの徐波成分が増加するがNREM睡眠により減少することから何らかのsynaptic homeostasisが働いている可能性を示しました。最後に睡眠と記憶の精緻化に関する発表では、REMまたは徐波睡眠により学習時に活性化した領域が再活性し、これが強いほど後の課題成績が高いことを示しました。

続いて行われた一般演題では、ヒトの脳の後半部分は内因性の活動と外因性の活動のそれぞれに関連した領域に2分されることを示した「The Bi-partite Organization of the Human Caudal Brain」という発表が眼を引きました。

第4日目は「Voxel-wise Coordinate Based Meta Analyses」と題したワークショップが行われました。これは数百におよぶ脳賦活検査の研究論文の中から、特定の課題関するものだけを選び出しその賦活部位に対するメタ解析を行ったものです。「Meta-analysis of Picture Naming: Effects of Baseline」と題した発表では絵の認知にかかわる脳領域について知覚的な処理は紡錘状回で、発声処理は前頭前野と小脳で行われていることが示されました。最後にインターネット上のサイトでこのようなメタ解析を行うことができることが発表されました。

「New Advances in Pediatric Neuroimaging」と題したシンポジウムでは近年注目を浴びている乳児から小児期における神経画像研究とERP研究の内容が発表されました。「Functional MRI in Normal Development」と題した発表では、fMRIにより計測されたHDRの形が小児と成人でほぼ同一であることが示され小児に対して通常のfMRI解析手法を用いることの妥当性が示されました。しかし課題内容は小児にも飽きさせずに行える工夫が必要で、スパイダーマンを用いたGo/NoGo課題で背側前頭前野の賦活が小児で成人より強いことが分かりました。「Probing Normal and Perturbed Brain Development with Diffusion Tensor Imaging」という発表では、白質の髄鞘化は2-3歳までにかなりの部分完成するが、その後も成人期に至るまで発達を続けることがDTIにより確かめられました。特に興味深いのは新生児において皮質のanisotoropyが強く見られることでした。このことは神経細胞が脳質周囲から発生してくる初期段階では皮質にほぼ垂直な形で並に水平方向の軸索が少ないことを裏付ける結果ではないかと報告されました。

「Structural Brain Development from Childhood through Adolescence」と題した発表では、灰白質の密度は年齢とともに低下し(7-16歳)、白質の密度は40歳代まで増加した後に低下に転ずるということが示されました。脳の領域でもその経過はかなり異なっており、内側前頭前野では灰白質密度は年齢とともに増加することも示されました。しかし討論の中でT1値とT2値は同じ部位でも年齢によってかなり異なっていることや、灰白質と白質の境界領域は特に小児では不鮮明でありコンピュータによる自動的な解析にはなじまないのではないかという疑問も上がりました。最後に「Using Event-Related Potentials to Track the Development of Face Processing from Infancy to Adulthood」では顔認知の発達的なERPの波形の変化について述べられました。

一般演題の中では、「From the Knight to the Right: An Event-related fMRI Study of Schizophrenic Thinking」と題した発表が興味深かった。ここでは統合失調症患者に文章理解の課題を行わせ脳賦活を健常成人との間で比較検討しました。その結果統合失調症患者では側頭葉前部の賦活が有意に強いことが示されました。

閉会の辞としてMarcus Raichleが「Reflections on the State of Brain Mapping, 2005」と題した講演を行いました。ここでは課題による脳賦活が脳研究のすべてではないということが強調されました。fMRIなどにより測定される内因性の信号変化やその領域間の相関関係も重要であるとされました。これらの領域は内側前頭前野、後部帯状回、下部頭頂葉などに分布しており、いわゆるヒトの脳の「default mode」に関する領域でした。最後に地元の主催委員会からの挨拶と、来年度の開催地であるイタリア・フローレンスの委員からの挨拶で4日間の学会は閉幕しました。